滋賀県議会 > 2022-12-12 >
令和 4年11月定例会議(第17号〜第23号)−12月12日-06号

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  1. 滋賀県議会 2022-12-12
    令和 4年11月定例会議(第17号〜第23号)−12月12日-06号


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    令和 4年11月定例会議(第17号〜第23号)−12月12日-06号令和 4年11月定例会議(第17号〜第23号)                 令和4年11月定例会議会議録(第22号)                                        令和4年12月12日(月曜日)           ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 議事日程 第6号                                         令和4年12月12日(月)                                         午 前 10 時 開 議  第1 議第145号から議第170号まで(令和4年度滋賀県一般会計補正予算(第5号)ほか25件)の各議案に対する質疑ならびに一般質問           ────────────────────────────── 本日の会議に付した事件  第1 日程第1の件           ────────────────────────────── 会議に出席した議員(43名)    1番   菅  沼  利  紀       2番   桐  田  真  人    3番   井  狩  辰  也       4番   本  田  秀  樹    5番   柴  田  清  行       6番   重  田     剛    7番   清  水  ひ と み       8番   河  井  昭  成    9番   佐  口  佳  恵       10番   小  川  泰  江
       11番   黄 野 瀬  明  子       12番   松  本  利  寛    13番   杉  本  敏  隆       14番   田  中  松 太 郎    15番   角  田  航  也       16番   塚  本  茂  樹    17番   山  本     正       18番   大  橋  通  伸    19番   駒  井  千  代       20番   中  村  才 次 郎    21番   白  井  幸  則       22番   村  上  元  庸    23番   桑  野     仁       24番   周  防  清  二    25番   海  東  英  和       26番   加  藤  誠  一    28番   目  片  信  悟       29番   有  村  國  俊    30番   岩  佐  弘  明       31番   富  田  博  明    32番   細  江  正  人       33番   川  島  隆  二    34番   奥  村  芳  正       35番   木  沢  成  人    36番   清  水  鉄  次       37番   大  野  和 三 郎    38番   冨  波  義  明       39番   江  畑  弥 八 郎    40番   成  田  政  隆       41番   九  里     学    43番   今  江  政  彦       44番   中  沢  啓  子    45番   節  木  三 千 代           ────────────────────────────── 会議に欠席した議員(なし)           ────────────────────────────── 会議に出席した説明員               知事              三 日 月  大  造               教育長             福  永  忠  克               副知事             江  島  宏  治               副知事             大  杉  住  子               知事公室長           中  嶋     毅               総合企画部長          東        勝               総務部長            河  瀬  隆  雄               文化スポーツ部長        谷  口  義  博               琵琶湖環境部長         高  木  浩  文               健康医療福祉部長        市  川  忠  稔               商工観光労働部長        浅  見  裕 見 子               農政水産部長          宇  野  良  彦               土木交通部長          門  間  俊  幸           ────────────────────────────── 議場に出席した事務局職員               事務局長            箕  浦  宏  昌               議事課長            吉  田     亮               議事課課長補佐         内  田  吉  行           ──────────────────────────────   午前10時 開議 ○議長(岩佐弘明) これより本日の会議を開きます。  直ちに日程に入ります。    ──────────────── △議第145号から議第170号まで(令和4年度滋賀県一般会計補正予算(第5号)ほか25件)の各議案に対する質疑ならびに一般質問 ○議長(岩佐弘明) 日程第1、議第145号から議第170号までの各議案に対する質疑ならびに一般質問を続行いたします。  発言通告書が提出されておりますので、順次これを許します。  まず、9番佐口佳恵議員の発言を許します。 ◆9番(佐口佳恵議員) (登壇、拍手)発言通告に従い、滋賀県子ども条例の見直し、または新条例の検討に向けて質問いたします。別途指定するまで全て知事に伺います。  本年7月議会において知事は、子供たちが置かれている現状、課題について、少子高齢化、核家族化、地域コミュニティーの脆弱化など、育つ環境の変化により、多様な学びや体験、家族以外の人との豊かな関わりが失われた。加えて、長引くコロナ禍の影響による保護者の就労環境の変化や、地域、学校行事の中止などが保護者や子供たちのストレスの原因にもなり、子供の貧困の深刻化や、児童虐待、ひきこもりの増加といった課題が顕在化したとの認識を示されました。  その上で、今の滋賀県子ども条例が制定されるに際して、平成17年──2005年に提出された滋賀県子ども条例検討委員会報告書および平成15年──2003年に提出された、次代を担う子どもの権利が保障され、生き生きと育っていける社会環境づくりに向けてという提言書などにも示されていましたが、今の滋賀県子ども条例が制定された当時の子供を取り巻く環境、課題はどのようなものであったかについて伺います。  次に、同じく本年7月、知事は「(仮称)子ども基本条例を早期に制定する」と述べられた上で、その新条例と現行条例との違いを問われた質問に対し、これまで保護の対象と捉えられがちだった子供を大人と同様の権利を有する主体として捉え直すこと、条項としても、育ち、育てる環境づくりだけにとどまらず子供の権利について明示すること、中でも、とりわけ重要で根幹とされる意見表明について言及され、その機会の確保について具体的な仕組みを規定したいと答弁されました。  意見表明権は、子どもの権利条約12条、こども基本法3条第3項に規定されており、子供にとっての最善の利益の原則と並んで、子供の権利を守る上で要と言えるものです。ですので、今回の見直しはとてもすばらしく、ありがたいと感じております。既に具体的な仕組みにも言及いただけておりますが、ぜひ具体的に実効性ある仕組みが規定されることを願っています。  その際、意見表明をはじめとする子供の権利保障を実効性あるものとするために、第三者的に中立公正な立場で関わる救済機関──以下、子供相談救済機関といいます。この子供相談救済機関と、完全に子供の側に立ち、子供に寄り添い、子供の声にならない声を聴き取る子供アドボカシーを行う機関の両方の設置を検討していただきたいと考えております。  子供相談救済機関については、兵庫県川西市子どもの人権オンブズパーソン、神奈川県川崎市人権オンブズパーソン、東京都国立市子どもの人権オンブズマン、世田谷区子どもの人権擁護機関せたがやホッと子どもサポート、略称せたホッとなど、名称は様々ですが、子供が親しみやすい略称など工夫されつつ、各地に生まれております。  本年令和4年4月28日の衆議院内閣委員会の提出資料、自治体子供相談救済機関グッドプラクティス集などで、個別救済、制度改善、広報啓発その他にわたり、多数の自治体の先進的な取組が紹介されており、参考となります。  本県でも、昨年令和3年度6月定例会議における一般質問の御答弁から、既に先進的に、子ども若者審議会子ども権利擁護部会に所属する弁護士や臨床心理士などの委員が施設に暮らす子供の声を聴いて処遇改善につなげる取組や、一時保護所の職員が日々の関わりの中で児童から表明された意見をケースワーカーに伝える取組を実施していただいていることは存じ上げております。  こちらの制度は、先ほど挙げた2つのうち、前者の中立公正な立場で調査、調整を行う子供の相談・救済機関の役割を担っていただいているように思います。この制度があるだけでも大変ありがたいことですが、量的に回数などを充実していただきたいと思うと同時に、質的な意味で、本気で子供の声を聴かせてもらうには、子供アドボカシー、それを実行する子供アドボケーターが必要だと考えております。  予算、人員が限られる中ですので、1つで十分ではないのか、どう違うのだとお考えになるかと思います。大分大学、佛教大学、武蔵野大学の研究者の方々の共著で、「子どもアドボカシー当事者参画のモヤモヤとこれから」という書籍において大変分かりやすく説明がなされておりますが、子供相談救済機関は言わば裁判所の役割で、関係当事者全員の意見や証拠を踏まえて判断するため、中立でなければならず、一当事者である子供のみを擁護することはできません。そのため、子供の立場に立ち代弁する子供アドボケーターが必要であると指摘なさっています。  暴力や重なるストレスにさらされた子供は、声を奪われている状態にあります。声を上げた結果を恐れるケース、意見があっても自分のことを意見を上げてよい存在だと思っていないケース、自分の意見を言うなどと思いつきもしないというケースさえ存在します。意思形成や、形成した意思を話せるようになるための物心両面のサポートが必要で、大人、他者との信頼感の醸成が必要です。  その際に、守秘義務の守秘ですが、守秘という概念があり、子供主導であることを核とする子供アドボケーターは、子供から話を聴いたとき、子供が言わないでほしいと訴えた場合は、たとえアドボケーター自身がそれを周囲に伝えるほうが解決になると考える場合であっても、周囲にそれを言いません。これは、子供が何でも話せるようになるために、思っている以上に重要です。  大人でも、誰にも話せないことを相談するときには、誰にも話さないでいてくれる人を選んで話しますよね。それが解決に近いか遠いかではなく、聴いてもらえたこと、秘密を守ってもらえたことで、自分が大切にされていると感じる、エンパワーされるという感覚も理解できます。もしそのとき、誰にも言えない秘密を打ち明けた相手から、あなたの問題を解決するには周囲に話したほうがよいと繰り返し説得されたり、実際、誰かに話してしまわれたりするとすれば、その人には相談できないと感じるでしょうし、もっと悪い場合は、もう誰にも相談しないと思うかもしれません。大人でもそうなのですから、逆境下で声を奪われている子供がさらにそう思ってしまっても無理はないと思いますし、そうなってしまうとすれば残念過ぎます。  他方で、中立公正に、事案の調査、調整、権限によっては勧告を行う子供の相談・救済機関が重要な事実の守秘を徹底していては、解決するものも解決しないことになりかねません。  このように、性質上、兼務し得ないので、予算、人員、限られる中ですが、子供の意見表明を本気で支えるなら、子供の相談・救済機関子供アドボケーターの両方が必要だと考えております。  厚生労働省で、子供の意見表明を支援する子供アドボカシーについて自治体に向けても報告書を出しておられますし、海外では知見の蓄積が進んでおり、ニュージーランドで開発され、欧米など17か国以上で採用されているファミリーグループカンファレンス、略してFGCという手法など、非常に参考になる制度が存在しております。  条例ではなく推進計画に位置づける方法もあるとは存じますが、条例が絵に描いた餅にならぬための実効性確保のために極めて重要な仕組みとなります。こういった制度まで含め、具体的に条例に位置づけていただきたいと願い、来年度の審議会などの議論に期待いたします。  意見表明権は子供全般に関係しますが、子供アドボケーターについてはまだまだ人員が不足し、今は人材育成を後押しせねばならない段階であると承知しておりますので、まずは国も示された社会的養護の分野に関して伺います。  子供の権利保障を実効性あるものとするための第三者的な子供の相談・救済機関および子供アドボケーターの制度について、その必要性、これまでの取組とどのようにすみ分けていくのか、あるいは統合していくのかなど、滋賀県が目指す社会的養護下における第三者的な子供の相談・救済機関および子供アドボケーターについて、お考えを伺います。  次に、教育長に伺います。今般、新条例が制定されるに当たり、意見表明を含む子供の権利が規定される方向となっています。意見表明も、スポーツや勉強と同じように、頭で知るだけではなく、繰り返し実践して身についていくようなところがありますので、子供たち意見表明できるようになるためには、子供自身が子供の人権について知り、意見表明する力を鍛えることができるような学習の機会を繰り返し持つことが重要です。  権利について知るという点では、新条例についてはまだまだ姿が見える前ですが、今からでも、子供の権利条約のいわゆる4原則、こども基本法は6条定めておられますが、中でも4原則が重要であると考えますので、あえて4原則とさせていただきます。4原則、すなわち、生命、生存、発達の権利、子供にとっての最善の利益を第一とすること、自分に影響がある全ての事柄について意見を表明できること、差別の禁止などについては、新条例ができる前でも学べます。  意見表明力を鍛えるという点で、さきに挙げた平成15年──2003年に提出された次代を担う子どもの権利が保障され、生き生きと育っていける社会環境づくりに向けてという提言書でも、3今後の取り組むべき方向の中の(1)子どもの権利保障についての基本的な考え方との項目で、子どものコミュケーションプログラムの作成といった具体的施策の提案がなされています。  こういった知見も参考に、意見表明についても絵に描いた餅とならないように努めていただければと思います。  例えば、まさに今は、子供たちが住む、ここ滋賀県、自治体で、子供たちについて定める子ども条例が新たに検討されるというめったにない機会ですので、子供たちが自分たちの権利について考えたり、可能であれば前回の条例制定時に行われていた子どもワーク会議のような場を持ったり、そこで議論してまとまった意見をアンケートやパブリックコメントに上げたりといった実践ができるとすれば、それこそ、自分のことを自分で考え、決め、行動するという主権者教育にもつながる極めて貴重な学習機会を持ち得ますので、生かしていただきたいと思います。  そして、大人も意識を変えていかねばなりません。日本では長い間、そして今もなお、子供を保護の対象としてのみ見る傾向が強いため、子供の権利の問題は、子供の問題であると同時に大人の問題であります。学校現場で申せば、子供の権利に関する教職員の意識を向上していただくことが必要です。こども基本法の施行、来年度の新条例制定の流れを受けて、特に子供の権利、意見表明に関しての学校におけるお取組について、教育長に伺います。  繰り返しますが、意見表明について滋賀の条例で明文化されるのは大変すばらしいことです。一方、意見表明、やや絞って、悩みなどを打ち明けてもらうことまで入れさせていただくと、子供と接する現場においては、子供からどうしたら意見を話してもらえるか、悩みを話してもらえるかというのは、ずっと以前から存在する難しい課題なのではないでしょうか。  特に、客観的には課題が深刻であるにもかかわらず、様々な要因や事情から主観的な相談ニーズが高くない、ゆえに、様々存在する支援制度や社会的リソースにつながることができていない方々へのアプローチをどうすればよいのかは深刻な課題です。その課題が児童生徒や保護者に存在している場合には、学校での課題把握が期待されます。また、要保護児童対策地域協議会、いわゆる要対協などにつながるというところまでいかない事案は、制度の隙間に陥りかねません。いずれも早いうちにキャッチでき対応できれば、事態の悪化を防ぐことができ、児童生徒や保護者にとってよいのはもちろん、学校現場や対応する方々の労力を少なくできる効果もあるとの指摘もあります。  そういった意味で、相談ニーズがなく、自ら制度に接触しようとしていなくても、毎日通う場である学校は、児童生徒、保護者の課題をキャッチできる場として非常に貴重な場であります。子供の貧困を議論する中で検討されてきたいわゆる学校プラットフォーム、子供を支援するための拠点として学校を位置づけようとする考え方があります。  子供の権利が法定され、本県でも条例化され行く今、この学校プラットフォームについて、貧困だけでなく、より広く子供の課題をキャッチし対応する仕組み、ネットワークとして検討し、構築していただけないだろうかと感じております。  子供の課題の質的、量的増加は、学校の先生方、特に担任の先生がお一人で抱えるには重過ぎます。予算、人員、限られる中で、先生にしかできない仕事があり、それに十分な時間を割いていただける環境づくりは、子供たちのためにも必要かつ重要と考えます。  平成29年度の議論で、あくまで一例ですが、文部科学省の学校における働き方改革特別部会第6回では、スクールソーシャルワーカースクールカウンセラー、コミュニティ・スクール、地域の子ども食堂など、受皿となり得る社会的リソースにも言及しつつ、そのままの文言で引用しますと、「教師がやるという意味ではなくて、見える化していくという意味で」何か形をつくれないだろうか、それが教職員の皆様の負担軽減にもつながり得るという方向からの議論がなされています。よい形で実現すれば、仕事も課題も山積する学校現場でなかなか難しい働き方改革の一手となりつつ、課題は深刻なのに相談ニーズが低い児童生徒や、制度の隙間で苦しい思いをしている子供たちに手が届く仕組みとなり得ると期待されます。  そこで、将来的なお話としてですが、学校プラットフォームについての教育長の御見解を伺います。  るる述べさせていただきましたが、将来的に子供の相談・救済機関子供アドボカシーが拡充していけば、そういった機関と学校との連携ということも視野に入るのでしょうが、さきに述べたように、今はそのための人材育成を図らなければならない状況とのことで、仮に制度ができたとしても、行き渡るまでには残念ながらまだまだ時間を要するでしょう。学校プラットフォームのような仕組みも、議論していただけるとしてもこれからです。  こうした中、学校現場のスクールカウンセラースクールソーシャルワーカーは、課題は深刻なのに相談ニーズが低い、キャッチもアウトリーチもしにくい課題や、制度の隙間にいる子供たちの課題を発見する役割を担っていただける、数少ない頼みの綱といった側面があります。  決算特別委員会でも言及させていただきましたが、現在、コロナ禍の関連で、スクールカウンセラースクールソーシャルワーカーについて予算や人員が割かれていますが、ウイズコロナ政策へと転換が進んだ際、予算が縮小される可能性もあり、大変危惧しており、何とか継続、拡充していただきたいと願っております。  そこで、現在、拡充されているスクールカウンセラースクールソーシャルワーカーについて、今後も維持、拡充を図っていただきたいと考えますが、教育長に御所見を伺います。 ○議長(岩佐弘明) 9番佐口佳恵議員の質問に対する当局の答弁を求めます。 ◎知事(三日月大造) (登壇)子ども条例につきまして5点御質問いただいたうち、私には最初に2点いただきました。  まず1点目、今の条例制定当時の環境と課題についてでございますが、地域社会においては、議員お示しの少子高齢化、核家族化、地域コミュニティーの脆弱化といった課題が当時からも指摘されていたところでございます。また、家庭では、養育力や教育力において課題が見られ、虐待の相談件数が年々増加しており、学校では、いじめや不登校、非行などの問題が深刻化してきたという状況があったと承知をしております。  こういった状況背景に、子供たちが生まれながらに持つ豊かな可能性を損なうことのないよう、子供が人権を尊重され、夢を持って健やかに育つ環境づくりが必要との認識があり、滋賀県子ども条例の策定に至ったと承知をしております。  2点目、社会的養護下における子供の相談・救済機関等についてでございますが、子供にとって生活環境が大きく変化する入所等の場面において、子供の意見や思いを確認することはとても重要だと考えております。そのため県では、これまでから、子ども若者審議会に子どもの権利擁護部会を置き、委員である弁護士や臨床心理士などが入所施設や一時保護所を訪問し、第三者的な立場から、我慢をしていることや悩みを相談できずにいることなどを、直接、子供たちから聴き取り、必要に応じて施設等に対し助言や指導を行ってきたところでございます。  こうした中、国においては、児童福祉法の改正により、令和6年度から、都道府県において、入所措置や一時保護等の際に子供の意見を聴取し、その意思を代弁する、いわゆるアドボケーターの仕組みを整えることとされたところでございます。  さらに、現在、アドボケーターの資格等についても検討がなされており、県といたしましてもその動向を注視しながら、まずは子供の最善の利益を考慮しつつ、子供に寄り添い、子供の意見が適切に反映される仕組みについて、本県のこれまでの取組を踏まえながら検討を進めてまいりたいと存じます。 ◎教育長(福永忠克) (登壇)滋賀県子ども条例の見直し等の検討に向けての5点の御質問のうち、私にいただきました3点の御質問にお答えをいたします。  まず1点目の子供の意見表明権に係る学校の取組についてでございますが、学校教育におきましては、従来は、子供たちを保護や指導の対象として捉え、どう導き、どう指導するのかという側面が強かったと感じているところでございます。  しかし、今後は、子供の最善の利益を保障するため、子供の声を尊重し、その意見をしっかりと受け止める機会を設けますとともに、子供に関する施策にできる限りそうした子供の声を反映していくことが求められていると考えているところでございます。  そのためには、まず、私たちが子供の権利について改めて認識し直しますとともに、子供自身が権利の主体であることの認識を子供たちが高める、そうした学びの充実を図ってまいりたいと考えております。あわせまして、子供が安心して自分の意見を表明できる、そうした環境づくりに努めてまいる所存でございます。  次に、2点目の学校プラットフォームについてでございますが、学校は全ての子供の状況を把握することができる場所であると思っております。この利点を生かしまして、子供の課題を早期発見し、適切な支援につなぐ体制づくりが必要と考えております。これからの学校や地域における様々な取組を円滑に進めるためには、各組織をつなぐ役割を担うコーディネーターの存在が重要であり、地域の多様な人が学校において、共に考え、共に取り組めるプラットフォームのような体制の構築について考えてまいりたいと思っております。  3点目の、スクールカウンセラースクールソーシャルワーカーについてでございますが、困難な環境にある児童生徒に対するスクールカウンセラースクールソーシャルワーカーの皆様の役割は、非常に大きなものがあると認識をいたしております。コロナ禍の中、近年、悩みを抱える児童生徒が増えることを想定し、国の補助等を活用させていただき、その拡充に努めてきたところでございます。  今後も、困難な環境にあります児童生徒にしっかりと寄り添えるよう、県教育委員会としてその配置に努めてまいる所存でございます。 ◆9番(佐口佳恵議員) (登壇)1つ目の、子供を取り巻く環境と課題について再問いたします。
     今回、あえて今の滋賀県子ども条例が制定された平成18年当時の課題を挙げていただきましたのは、コロナ禍特有の課題以外の、少子高齢化、核家族化、地域コミュニティーの脆弱化といったものは、今の滋賀県子ども条例が制定された以前からあった課題であったことと思います。  また、滋賀においては、平成15年──2003年8月に作成された次代を担う子どもの権利が保障され、生き生きと育っていける社会環境づくりに向けてという提言書において、さらなる核家族化を超えて、家族形態の多様化、よく例に挙げられますのは、独り親家庭の増加、シングル世帯の増加などですが、こうした家族形態の多様化や、大人の生活の多忙化、塾や習い事に追われる子供の多忙化、学校現場の多忙化、子供と大人、子供と子供のコミュニケーション不足などについて指摘されています。  平成17年の滋賀県子ども条例検討委員会報告では、大きな社会背景的課題にとどまらず、権利侵害を受けてもつらくて我慢をしてしまう子供、疲れている子供、孤立していく子供の姿を、当時行われた子どもの権利に関する実態・意識調査の結果から、子供や子供を取り巻く大人など人間の状態に切り込んだ分析がなされ、大人との意識のずれや、大人が思う以上の深刻さがまざまざと報告されていました。  それだけの報告書、提言書があり、それらがそろって課題解決のために子供を権利を享受し行使する主体とした条例の制定が必要と訴えておられたようですが、滋賀県子ども条例は大きな第一歩を進めてくださったのだろうとは思いますが、個別の条文を見るに、子供の権利に関して十分な条項は定め切れていなかったように思います。  即応すべき課題に適時適切に応じ切れないことは、子供政策に限ることではないとの御意見もあると思います。ですが、世界人権宣言が1984年、児童の権利宣言が1959年、子どもの権利条約採択が1989年、日本での批准が1994年です。滋賀においても現在の条例制定は平成18年で、今回の見直しがなされるまで16年たっています。前回、検討会や子どもワーク会議などに参加してくださった小中高生のお子さんたちは、すっかり大人となられています。もうそろそろという気持ちです。  私は、特に日本においては、様々な要因から声を上げるのが難しい子供の権利保障が後回しにされてきたと考えております。今般、こども基本法の制定を受け、滋賀でも、子供の人権、最善の利益、意見表明や差別禁止といった、いわゆる子ども基本条例等の4原則に沿った条例ができるであろうこの機会ですので、ぜひ権利規定の充実と、それらが実効性を持てるような権利侵害の救済、予防を図る権利保障の制度まで位置づけた条項を備えた条例となることを願っております。  来年度の審議会等の御意見によるところ大きいと思いますので、明言等なさりにくいことは承知しておりますので、知事が公約に掲げられた(仮称)子ども基本条例の制定、子供の権利保護、意見表明権の明記、子どもコミッショナー・子ども県政モニターの検討に向けた決意をお聞かせください。 ◎知事(三日月大造) ありがとうございます。  おっしゃったとおり、少子化、核家族化、地域コミュニティーの脆弱化、さらに家族形態が多様化する、それぞれが忙しくなる、お互いのコミュニケーションが不足する、加えてコロナ禍という、こういう環境の変化があるということは当然前提にしつつ、ただ、同時に、私ども、今、協議の中でも申し上げてるのは、ややもすると、そういった難しく、そしてネガティブな変化だけを捉え過ぎて、そこを出発点にし過ぎるあまり、そこから出てくる結論というものが、方向性というものが、少し皆さんになかなか受け入れていただきにくい、理解、賛同が得られにくい、そういったことになることも懸念しつつ、やはり大事なことは、一人一人、全ての子供、一人一人の子供と全ての子供というものにしっかりと焦点を当てて、生まれてくること、今、生きていること、それぞれ個々、力を持っていること、こういったことに着目し、それらを伸ばしていく、より幸せな状態に持っていく、そういったことをまず起点にする必要があるのではないかと思っております。  同時に、昨年来、いろんな情報を整理しておりますと、困難、極限の状態にある子供たちは、またその世帯の人たちは、合理的な選択をなかなかしづらいというような傾向があるようでございます。意見があったら言って、思ってることがあったら言おうという、そういった選択すらなかなか至らないということも十分踏まえる必要があるでしょうし、我々の世代やその上の世代は、成長の幻想というものを持ち過ぎているがあまり、そういったことのために勉強するんだ、教育するんだということに立ちがちなんですけれども、そうじゃない前提というものを、もっとお互い一人一人の子供たちの希望ですとかありように目を向けた、そういった対策ということが必要ということもよく踏まえた上で、この子供の条例の制定の検討をしていく必要があると思っております。  したがって、そういった環境づくりのほかに、子供の権利を尊重することについて、また、子どもコミッショナーや子ども県政モニターといった子供の意見表明を支援するための具体的な仕組みについて、当事者である子供や若者をはじめ、多くの方々の御意見も伺いながら、丁寧に、かつ積極的に検討を進めてまいりたいと思っております。  この条例の制定により、その過程も含めて、県民の皆さんとともに条例の基本的な考え方を共有いたしまして、子供のために、子供と共につくる滋賀県政というものをしっかりつくっていければと考えております。 ◆9番(佐口佳恵議員) 終わります。(拍手) ○議長(岩佐弘明) 以上で、9番佐口佳恵議員の質問を終了いたします。  次に、12番松本利寛議員の発言を許します。 ◆12番(松本利寛議員) (登壇、拍手)今年の7月の集中豪雨で安土駅近くの跨線橋のアンダーパスが冠水をして、通行中の住民の方が亡くなられました。7月の議会で、私はこの事故について原因究明と再発防止を求めて発言をさせていただきました。  先日、この事故で亡くなられた御家族の皆さんが、管理責任を問うとして、近江八幡市と滋賀県を相手にして損害賠償請求訴訟を行われました。改めてこの場をお借りをして、事故の原因究明、そして再発防止、そして、訴訟を起こされた御家族の皆さんに誠意のある対応を県に求めておきたいというふうに思います。  それでは、質問に移ります。日本各地で、地域住民の足である鉄道網やバス路線の廃止、廃線、減便による公共交通の衰退が進んでいます。近江鉄道沿線地域公共交通再生協議会──以下、再生協議会──に参画された岡山の両備グループの小嶋光信CEOが、公共交通衰退の原因は、モータリゼーションと規制緩和と費用対効果の導入など5つの要因を挙げるとともに、日本の公共交通が民間任せになってきたことにあると指摘をされました。的を得た指摘だというふうに思います。  2013年の交通政策基本法制定時に移動の自由を保障する交通権の議論が進みましたが、法律に盛り込まれませんでした。この移動の権利、交通権は、いつでもどこでも誰でも自由に移動できる社会を保障するという、憲法25条の生存権として国や自治体が保障の責を負うという考え方です。今、県が見直しを進めている滋賀交通ビジョンに、この移動の権利、交通権を保障する基本的姿勢が据えられているか、知事にお伺いをいたします。 ○議長(岩佐弘明) 12番松本利寛議員の質問に対する当局の答弁を求めます。 ◎知事(三日月大造) (登壇)お答えいたします。  移動の権利、交通権について、法的な定義はないものの、交通政策基本法第16条、17条をはじめ、各条文等において実質的な意味づけが規定されていると認識しております。  現在進めております新たな交通ビジョンの策定に当たりましては、この点についても常に意識しながら、誰もが行きたいときに行きたいところに移動ができる滋賀の実現を目指し、議論を進めているところでございます。 ◆12番(松本利寛議員) (登壇)日本の公共交通政策を考える場合に、国鉄の分割民営化は国の交通政策の大転換でした。その分割民営化から三十有余年、社会や経済の状況が大きく変化したにもかかわらず、国の交通政策の基本は依然として、民営化したから市場に任せるという姿勢が続いています。人口減少や地域経済の衰退が進む地方の公共交通へのまともな支援がありません。  分割後のJRは、大都市圏や大都市間の鉄道網やホテル、駅ナカ、マチナカなど、もうかる事業への巨額の投資を進め、膨大な利益を上げる一方で、地方には、ローカル線の廃止、減便、バス路線の廃止を迫る地方切捨てを押しつけてきました。今、さらにこれを加速させようとしています。  こうした国鉄分割民営化以後、進められてきた、市場に任せるという国の公共政策について、知事の所見を伺います。 ◎知事(三日月大造) これは大変重要な、大きなテーマだと思います。一言ではなかなかお答えしにくいことがあろうかと思いますが、それ以前の国鉄の経営ですね、様々な非効率な面があった、大きな赤字があった、様々な職場の問題があった、こういったことを改善、解決するために、分割し、そして、民営化によって効率化する、サービスをよりよくしていくという、こういった思想の下、当時、世界でも、そういったプライバタイゼーションというような、そういう大きな流れがあったと思います。  そういう中で、国鉄の分割、特に民営化が行われ、以降、誕生したJRは、いろんな課題、心配もありましたが、それ以前の経営体に比べて随分サービスもよくなったんじゃないか、駅もきれいになったんじゃないか、様々なことができるようになったんじゃないかという、こういったプラスの面もあったと思います。  ただ、同時に、その一辺倒であり過ぎるがあまり、また、全国津々浦々がそれで全てうまくいくかというと、そうじゃない課題も顕在化してきたのが現在であるというのがあるのではないでしょうか。特に、私自身も様々な関わりいたしましたけれども、JR西日本の福知山線の脱線事故、安全確保の問題ですね、また、なかなか必要だけれども進まないバリアフリーの問題、乗る人は少ないけれどもその地域にとって不可欠なローカル線の問題、こういった事々をどうしていくのかということは大きなテーマだと思います。  したがって、利用者の減少等に伴って、民間事業者の力だけでは地域公共交通が維持できない、こういう状況をどうするのか、また、例えば国の交通予算につきましても大半が整備新幹線であるというようなことから、それらをどのように見直していくのかという、こういったこともあるのではないでしょうか。  国では、ここに来てようやくローカル線のリデザインについて議論が始まったと承知をしております。国も主体的に関与しながら、鉄道事業者、沿線自治体の共創を促し、持続可能性と利便性の高い地域公共交通への再構築を促進していくという方向性が示されたところでございます。  そういう意味で、この間進められてきた国鉄分割民営化後の交通政策についても、いま一度見直し、新たなモデルをつくっていく必要があるのではないか、私はこういった事象を、明治以降進めてきた民営化による鉄道経営、交通経営、それらを見直すという意味で、卒近代の一つのテーマに位置づけさせていただいておりますけれども、こういった視点も必要なのではないかと考えているところでございます。 ◆12番(松本利寛議員) (登壇)今、知事がおっしゃられたように、今の政府の鉄道政策が、整備新幹線やリニア新幹線など膨大な税金の投入を行うとともに、JRもまた、もうかる大都市圏への投資を集中しています。地方のローカル線は、JRで39路線、770キロが既に廃線となり、地域の公共交通全体の衰退が進みました。通勤、通学、病院通院ができないなど、住民生活に困難を生んでいます。過疎地域では人口の流出を加速させてきました。  その後、国は地域公共交通再生活性化法を制定し、地域公共交通確保維持改善事業などを進めていますが、いかんせんその財政規模は200億円程度と、1桁違う状況であります。しかも、国とJRは、利用者1日1,000人未満のローカル線について、JRか自治体の要請で国が特定線再構築協議会を設置し、3年以内に廃線か、他の交通手段への変更かの結論を出す仕組みをつくろうとしています。これでは、ローカル線はもちろん地方の幹線鉄道網まで廃線されかねません。もうかる地域ともうからない地域、都市圏と地方過疎地域で大きな交通格差が広がっています。  こうした公共交通の在り方について、知事の認識を伺います。 ◎知事(三日月大造) これも大変重要なテーマだと思いますね。  この30年余り、費用対効果、いわゆるB/Cというものに私たち国民全体がとらわれてきたという面もあるんだと思います、かけた費用に対してどれだけリターンを生むんだ。重要な視点だと思いますが、それで縛られ過ぎると投資は都市部に集中しがちです。乗る人が少ないと、そういったところに公的投資を充てるという理解が得にくいという、こういう現状がございますので、そこをどう乗り越えていくのかという視点が1つはあるのではないでしょうか。ここは小嶋両備グループの代表がおっしゃることとも私は共感を持つところです。  また同時に、都市圏、地方過疎地、それぞれの地域に、それぞれの特性に応じた交通サービスの在り方、ネットワークの在り方ということもあるのではないでしょうか。それらを一律一様に捉えるのではない視点というのも必要だと思います。その中で、鉄道ということに言及されましたけれども、鉄道というモードに適した状態なのかどうか、定時の大量輸送に適した地域であるかどうかということも重要なことだと思います。  いずれにいたしましても、それぞれをしっかりと検証しながら、その路線に合った移動手段の規模、ダイヤ、そういったことを考慮しながら移動手段のベストミックスをそれぞれの地域でつくっていく、こういったことが重要なのではないかと考えております。 ◆12番(松本利寛議員) (登壇)先ほど述べました、交通政策基本法にいわゆる移動の保障、交通権が盛り込まれなかったんですが、しかし、国民の移動する権利は、憲法の住居、移転の自由、生存権、それから幸福追求権など、人権保障の一部であることは確かです。  国民が安心して豊かな人生を享受するためには、公共交通、移動の権利が保障され、行使できる環境が整えられることが重要です。地方公共交通を維持、確保、改善することは、国と地方公共団体など行政が責任を負うべきであるというふうに思います。その移動の権利、交通権を保障する第一義的な責務は国にあると思います。  交通政策の財源確保を含め、国がしっかり責任を果たす地域公共交通政策が極めて大事だと、重要だと考えるんですが、知事の認識を伺います。 ◎知事(三日月大造) 今お尋ねいただいたことについては私はおおむね共感するんですけれども、まず1つは、日本国憲法第25条に掲げております「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という、この文化的で健康的な最低限度の生活というものについて、しっかりと今の時代においてどのような状態を指すのかと、それらを実現するために誰がどのような役割を果たしていくのかということを再定義していく必要があるのではないでしょうか。  まず私はこういう認識を基礎に持ちながら、その議論をし出すと時間もかかりますので、私も関わりました交通政策基本法においては、国に対して「交通に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する」と規定いたしまして、地方公共団体や交通事業者等の責務、国民の役割等についても規定をいたしました。それぞれの主体がそれぞれの責務、役割を果たすことが必要だと思っております。  特に地域交通につきましては地域の重要な社会インフラでありますので、国の財源、判断のみに頼るのではなく、県と市町が自主的、主体的にしっかりと取り組み、それぞれの役割を果たし合うことが重要だと考えているところでございます。 ◆12番(松本利寛議員) (登壇)これまでの国の公共交通政策の下で、滋賀においても、JRのダイヤの減便、地域幹線バス路線の廃止、減便、地域のローカル鉄道の経営困難、コミュニティーバスの赤字などなど、地方公共交通が抱える共通の課題が滋賀においても山積をしているというふうに思います。  改めて滋賀交通ビジョンを見直し、改定するに当たって、地域公共交通の課題について知事の認識を伺います。 ◎知事(三日月大造) まず、語る前に、ゼロ番地として安全第一ですので、安全を守るための投資や人の配置、またシステムの整備、こういったものをしっかりと担保しておくということが重要です。  さらに、1つ目は、人口減少に伴って利用する人が減ります。また、運転する人も減ります、不足します。さらに、コロナ禍の影響によって、地域鉄道や路線バスなどのいわゆる二次交通については事業継続が危ぶまれる路線も少なくありません。JR線についても例外ではなく、本県は比較的恵まれた環境にはありますものの、一部ダイヤ減便が既に実施されるなど、先行きは決して楽観視できるものではございません。  今後、ダイヤや運行形態などを改善しながら、基幹交通である鉄道と二次交通を組み合わせて、利便性が高く持続可能な交通ネットワークを構築すること、また、それらをできるだけ積極的に利用しようという、こういう視点を持った運動、こういったことも同時につくりながら、それらを維持、また充実させていくことが重要な課題であると認識しております。 ◆12番(松本利寛議員) (登壇)今、知事がおっしゃった滋賀の交通ビジョンを策定するに当たって、県東部、内陸部を縦貫をする近江鉄道路線の在り方の検討が非常に私は重要だというふうに思っています。  近江鉄道については、近江鉄道再生協議会の下で近江鉄道沿線地域公共交通計画が策定をされ、車両を運行する第2種事業者と、鉄路管理を行う第3種鉄道事業者による上下分離方式の事業計画、事業の実施が計画され、鉄道施設の整備、保守、管理を行う第3種鉄道事業者である近江鉄道線管理機構が12月に発足をします。そして、従来の近江鉄道株式会社が鉄道の運行に当たりますが、この近江鉄道が施設を含む鉄道事業全体に責任を負わないことから、施設の維持管理から解放され、事業責任が軽くなったとの受け止めから、鉄路の安全管理や鉄道の利便性の向上等の取組が希薄になるのではないかという不安があります。  あってはならないことですが、近江鉄道線管理機構が鉄道事業に不慣れなことから、安全管理や利便性の向上について鉄道の運行事業者にしっかり迫れるのかなどの課題もあると思います。改めてこの2種、3種鉄道事業者のそれぞれの使命と役割、その相互協調について知事の認識を伺います。 ◎知事(三日月大造) まず、この五、六年、近江鉄道の窮状が伝えられて以降、鉄道線として残すのか、そして、残すならば全線残すのか議論をいたしました。廃線にした場合の影響、そして一部残すことの非効率性、こういったものを勘案し、結果、詳細な説明は省きますが、全線存続というものを決めた上で、しからばそれをどういう仕組み、システムで残していくのかということの中で、今お取り上げいただいた上下分離による運行、経営という選択をしてきたものでございます。  この近江鉄道線の活性化、再生を図るためには、近江鉄道線管理機構と近江鉄道株式会社とが基本的な役割をしっかりと果たすことが大前提でございます。とりわけ安全管理につきましては何をおいても重視すべき事項であると認識しておりまして、そのため、鉄道会社において豊富な経験を有する方を安全統括管理者として管理機構に専任で配置する予定でございます。  また、沿線自治体とこの管理機構が近江鉄道株式会社に対し、安全管理はもとより、サービス改善や利便性向上等についても意見を述べ、あるいは提案することができる仕組みも取り入れるなど、双方がコミュニケーションを密に連携、協力しながら、輸送の安全を確保しつつ、持続可能な運行ができるよう努めていきたいと、いくべきだと考えているところでございます。 ◆12番(松本利寛議員) (登壇)近江鉄道沿線地域公共交通計画については、沿線地域の活性化とともに、鉄道の利便性の向上をいかに図るかが極めて重要だというふうに考えます。  既に協議会に活性化、再構築分科会が設けられて、活性化や利便性の向上の検討が進められていますが、運行ダイヤの増便、接続ダイヤの改革、無料駅駐車場の設置、第2次交通ネットワークの整備、新路線や新駅の設置、運賃の引下げなどなど、地域の活性化と利便性の向上を図る計画をどう策定をしようとしておられるのか、土木交通部長に伺います。 ◎土木交通部長(門間俊幸) (登壇)お答えいたします。  近江鉄道線の利便向上や地域の活性化等ついては、地域公共交通計画に定められました方策の具体化に向け、近江鉄道線活性化分科会等におきまして検討を進めているところでございます。  近江鉄道線の魅力や価値を高めるためにはサービスの改善や利便性向上策が不可欠であることから、全国の地域鉄道の取組なども参考にしながら、来年度策定いたします鉄道事業再構築実施計画に具体策が反映できますよう、関係者等とより一層、議論を深めてまいりたいと考えております。 ◆12番(松本利寛議員) (登壇)近江鉄道沿線の活性化等々について取組を進めていただいているとは思いますが、どうも肝腎の、鉄道を利用しよう、利用したいという地域住民の利用者の声を集める運動がいま一つ弱いんではないかというふうに感じています。  先日、福井県へ寄せていただいたんですが、やっぱり地域の住民が立ち上がって、自ら鉄道を守り、存続させようという、そういう熱い思いが結集をされていたような気がします。そういう意味で、鉄道の存続、充実を求める幅広い住民の声を集めて、利用しよう、使用したいという地域の運動を広げることが重要だと考えるんですが、土木交通部長の認識を伺います。 ◎土木交通部長(門間俊幸) お答えいたします。  近江鉄道線の活性化につきましては、例えば貴生川駅周辺におけるイルミネーションイベントや花火大会の開催、日野駅での高校生によるカフェの運営、多賀大社駅前でのライブ活動、鳥居本駅周辺におきます宿場町イベントや清掃活動の実施、近江鉄道を舞台としました映画制作など、沿線各地で住民等が主体となった様々な取組が既に展開されております。  また、9月には沿線13企業によります公共交通を利用した通勤の在り方に関する意見交換会が開催され、事業者付近への新駅設置やダイヤに合わせた始業時刻の調整などの取組を発表されたところでございます。  また、近江鉄道線の盛り上げに取り組む団体間の交流も始まっており、昨年度から開催されております交流会をきっかけとしまして、10月の近江鉄道線全線無料デーでは、団体が連携し、17のイベントが沿線全域で開催されるなど、沿線の住民、企業、行政間での言わば正の循環、正のスパイラルができつつあり、公共交通をよりよくする機運の醸成が図られつつあると感じているところでございます。  こうした取組につきましては、近江鉄道線の利用者増加のみならず、沿線地域の活性化にも必要不可欠でありますことから、各団体の交流をより一層促進するとともに、沿線地域外の団体や鉄道事業者等との新たな連携も図りながら、取組のさらなる拡大と機運醸成に努めてまいりたいと考えております。 ◆12番(松本利寛議員) (登壇)滋賀の交通ビジョン策定に当たって、先日、公共交通の現状および意向に関するアンケート調査が実施をされました。公共交通の現状やサービスレベルなどを把握することは重要だというふうに考えるんですが、しかし、今回実施された費用負担の意向調査については、交通税の導入を前提にした極めて意図的な調査ではないかというふうに思います。設問には、突然、新たな費用負担が提起され、現在の赤字が続けば公共交通が廃止をされるおそれがある、税が使われれば交通以外のサービスも低下するなど、まるで住民の新たな負担が必然かのような設問になっています。  本来、公共交通の維持、存続の責務は国であり自治体です。しかも、その財源をまず国が保障し、自治体も含めて現在の歳入財政で支出の在り方の見直しをすることも肝腎です。そうした前提を欠落させて、いきなり新たな負担を求める手法になっています。あまりにも新たな負担と税導入に誘導するアンケート調査ではないか、アンケート調査の結果をもってして、交通税導入が理解されたなどという理屈を並べられることにはならないと思うんですが、知事の所見を伺います。 ◎知事(三日月大造) お取り上げいただきました10月に実施したアンケートでは、「サービスレベルの維持や向上に対し必要な費用を運賃以外に一部負担してもよいと思うか」という質問を設けさせていただきましたが、これはあくまで負担の御意向の有無を確認するものでございまして、御指摘の交通税導入への誘導を意図したものではございません。  また、この設問に対し、約6割の方が「思う」「どちらかといえばそう思う」と答えていただいた、そういう結果でございましたが、これをもって直ちに交通税の導入につながり得るものではないと認識しておりまして、県民の皆様に新たな負担を求めることも含め、必要な財源をどのように確保するのかにつきましては、今後も丁寧に議論を進めていくことが必要だと考えております。 ◆12番(松本利寛議員) (登壇)公共交通に必要な財源は、第一義的には国の責任だというふうに思います。財政支出の在り方も含め、検討、改善すべきであります。  公共交通の長い歴史を持ち、その重要性を認識するEU諸国では、移動権の保障を明文化しているかどうかにかかわらず、国民の自由で安全な移動を支える施策を充実しています。フランスでは、地域の公共交通を維持するために、国が労働者の通勤などで受益がある地域内の事業者から交通税を徴し、バス事業等に5,800億円補填をしています。ドイツではエネルギー税の一部を地域公共交通に配分するなど、連邦政府が1兆円を超える財政援助を地方に続けています。  今、県がなすべきは、県民に新たな税負担を求めるのではなく、国に財政負担を迫ることこそ重要です。政府の地方公共交通政策に対する負担は、EU諸国と1桁も2桁も少ないのです。国に地域公共交通の財政負担の充実を迫ることについて、知事の認識と姿勢を問います。 ◎知事(三日月大造) もはやこれまでのように、民間事業者が自ら運賃収入を基に運行を行い、都市部での利益で地方の損失補填しながら運行を継続するという、こういうやり方だけでは公共交通のネットワークを維持することは困難であると認識しております。  国が地域交通の維持、充実に向けてしっかりと財源を確保することはもちろん重要であると私も思います。これまでから国に対し、必要な財政支援を要請しているところです。引き続き、知事会などの場、また政策提案の場なども活用しながら、こういった施策の充実をしっかりと強く訴えてまいりたいと思います。  ただ国に迫るだけではなく、求めるだけではなくて、自治体としてそれぞれの地域の特性に応じ、創意工夫により課題解決に取り組んでいくことも、私はこれは自治の観点から大変重要な取組だと考えており、その一環として、負担分担の在り方についても逃げずに議論を行うべきだと考えているところでございます。 ◆12番(松本利寛議員) (登壇)交通税の導入の方向について答申をした県の税制審議会ですら、交通ビジョンや目指すべき公共交通の姿を示すとともに、財源については同時並行で議論する必要があるとしています。しかし、この税制審議会の議論は、財源について、財源というふうに表現しますが、公共交通に対する国の責務と財政負担の議論は全く行われていません。また、国と県の財政支出の在り方、予算の配分の見直しの議論も全く行われていません。納税者が見れば、まずはそこからスタートをせよということではないでしょうか。新たな交通税導入ではなく、まずは現在の歳入の中でその配分を見直し、公共交通の充実に向ける配分を捻出するべきだというふうに考えます。  この議論を抜きにして、県民に新たな負担を求める税の導入など許されないというふうに考えるんですが、知事の認識を伺います。 ◎知事(三日月大造) 議員、同じ立場に立って、議論、取組を始めようとしてるんじゃないかなと思いながら、今、聞いておりました。  御指摘のとおり、行政が新たな施策を実施する場合には、既存の財源の中で配分の見直しを検討する必要もあると認識しております。これはもう毎年、不断にやらせていただいております。そうしたことを行ってもなお、施策に必要となる財源に不足がある場合には、それをどのように確保していくのか。当然、ビジョンとセットだと思います。そのビジョンを実現するための財源、負担分担の在り方についても、慎重かつ丁寧に議論を積み重ねていくことが重要だと考えます。 ◆12番(松本利寛議員) (登壇)最後になりますが、知事は交通税について、滋賀県が他県に先駆けて実施をする、森林税のように県が始めれば全国に広がる、やがて国も実施するという趣旨を新聞紙上で述べられたと仄聞をしています。しかし、公共交通の確保に対する責務は第一義的には国にあります。その国の財政支出が極めて貧弱な中で県が新たな税の導入を行えば、それこそ全国に先駆けて国の財政負担の責務を免責する流れをつくりかねないんじゃないかというふうに思います。  また、地方税として新たな税を導入しても、その額では地域公共交通の維持、改善に必要な財源を確保するレベルのものにはなりません。諸物価の高騰、実質賃金の低下、年金削減、税、社会保障保険の負担の拡大など、今の経済状況下で新たな税負担を県民に求めることはできないと考えます。逆に、交通税導入は、国の責任、責務を免責し、全国的な弊害となります。公共交通の維持、改善に必要な十分な財源確保にもなりません。新税の導入は行うべきではないというふうに考えますが、改めて知事の認識を問います。 ◎知事(三日月大造) そこは議員と認識を異にいたします。しっかりと受け止めたいと思いますが、当然、税も含め、負担は多いより少ないほうがいい、かつ、こういった経済状況、暮らしの状況を十分に考え合わせた上で、慎重にも慎重を期して、また、ビジョンとセットで、負担の在り方、分担の在り方、これは検討していく必要があると思っております。  ただ、防衛にしろ、社会保障にしろ、子供にしろ、交通にしろ、こういった私たちの生活にとって必要な社会的な共通資本を、純粋たる例えば公共財というようなものをどのような負担分担で賄っていくのか。もちろん国の財源しっかりと使いながらやる、これは重要だと思いますが、それでも必要、それでもやらなければいけないことに対してどのように財源を生み出していくのかということについては、国の財源配分だけでは十分ではないと考えますし、国がもちろん議論すればいいんですけれども、国の議論が行われない場合に地方から議論を提起していくということも私は重要な役割ではないかと考えておりますので、丁寧に議論を積み重ねていきたいと存じます。 ◆12番(松本利寛議員) (登壇)私は国の財政支出が、先ほども言いましたように、EU諸国と比べても1桁も2桁も違う。そういう問題について、せっかく関西広域連合のトップになられたんですから、より深刻な兵庫県とか、あるいは京都府とか、あるいは福井県とか、そういった県と一緒になって、地方の公共交通に対する国の財政支出について、1桁、2桁上げるような運動をやっぱり全力を挙げてやるべきだというふうに思います。ぜひ頑張っていただきたいというふうに思います。  ただ、交通税の新税導入については、これはやっぱり県民が今の生活状況からして納得できないということではないかというふうに思います。  次の質問に移ります。農業と食料の危機について質問します。  農業に限らず、社会の持続性の欠如が指摘をされて、持続可能な社会への転換が世界の共通認識になっています。特に地球温暖化の下で進む異常気象は、パキスタンで国土の大半が農業生産が不可能となる食料危機が広がり、コロナパンデミックやロシアの軍事侵略は食料のサプライチェーンを崩壊させ、食料の安全保障への不安が広がっています。グローバル資本主義の下で、金さえ出せば何でも買えるという自由貿易を加速させてきましたが、生きる糧としての食料とその生産を担う農畜産業の持続可能性が問われ、食と農の危機をつくり出しています。  こうした国際情勢の下で、改めて、自国の食料は自国でを基本とした食料安全保障の視点からも、食料自給率を引き上げる農業政策への転換が焦眉の課題になっているというふうに思います。こうした世界の情勢を踏まえ、農と食の危機に対する知事の所見を伺います。 ◎知事(三日月大造) 現行の滋賀県農業・水産業基本計画を策定する過程において、今回のコロナ禍の経験も踏まえて、これまで以上に、私たちが食べるものが、地元で、地域で生産されていることの安心を感じ、地産地消の大切さを痛感したところでございます。  さらに、現下の国際情勢等の影響で、肥料や飼料などの農業資材等の価格高騰が農畜水産業の経営を圧迫していることや、CO2ネットゼロの脱炭素の大きな流れの中で、遠くから船やトラック等で運んでくるということの、こういったことに対する懸念なども十分勘案し、海外からの輸入に頼らなくても済むよう、国内はもとより地域内の資源循環体制の構築を目指すことが重要だと認識しております。 ◆12番(松本利寛議員) (登壇)次の質問は、私、常任委員会が所属の関係もありますが、後に続く知事質問との関連で農政水産部長に回答をお願いしたいんですが、世界の食と農の危機と同時に、食料生産を担う農業生産の現場では、肥料や農薬、飼料や燃料、電気料金の高騰が続いています。来春のみずかがみの一発処理肥料20キロ当たり昨年3,889円でしたが、今年は4,725円に、土壌改良資材フレコン200キロが1万8,645円が2万4,650円に急騰をしています。  こうした生産資材などの高騰等は、コストを押し上げ、農業経営を圧迫をしています。肥料、農薬を含め、配合飼料、粗飼料、燃料、電気料金の高騰の実態について、農政水産部長にお伺いをいたします。 ◎農政水産部長(宇野良彦) (登壇)お答えいたします。  主なものを申し上げますと、国の調査統計では、肥料は昨年比約1.4倍、牧草などの粗飼料は1.3倍から1.4倍、農事用の電力料金は約1.7倍と、生産資材の価格の高騰が続いているところでございます。 ◆12番(松本利寛議員) (登壇)今年の5月議会、それから9月議会で、そしてまた今議会でも、燃油の高騰、肥料価格の高騰、配合飼料の高騰などなど、国の措置も含めて13億円規模の対策が実施をされました。しかし、価格高騰は高止まりをし、長期的な農業経営の展望が持てないなどの声が農業者から上がっています。  これまでの支援策で農業経営の困難の打開に寄与できていると考えておられるのか、知事の認識をお伺いをいたします。 ◎知事(三日月大造) 議員御指摘のとおり、農業生産に必要な資材の価格高騰が続いていることを背景といたしまして、生産者の皆様が今後の経営に大きな不安を感じておられることは、私も現場の声を直接お聴きして痛感しているところでございます。これからも様々なお声を丁寧にお聴きすることが重要だと思います。
     こうしたことから、これまで国において必要な対策を講じられるよう、随時、提案や要望を行いますとともに、県としても農業経営を継続するために必要な緊急対策等を実施してきたところであり、生産者や土地改良区の皆様からも、一定、感謝のお声をいただいているところでございます。  ただ、これで十分だと言えばそうじゃない面もあろうかと思いますので、不足することがあれば、国の政策等をしっかりと取り入れながら、県としても構築し、また御提案、御相談申し上げたいと存じます。 ◆12番(松本利寛議員) (登壇)国際情勢の中で様々な資材が高騰している、こういう状況で、肥料など農業資材の短期的な高騰対策だけでは、生産費を賄う農業の生産が保証できない実態ではないかというふうに思います。少なくとも来年度以降の農産物の生産に対する支援の方向を示すとともに、中期的な視点に立った農業経営への支援が必要だと考えるんですが、知事の認識を伺います。 ◎知事(三日月大造) 同感です。生産資材の価格高騰の長期化が懸念される中、高騰分の負担軽減と併せ、中長期的な適応策ですとか構造改革など、推進が必要、重要だと考えます。  引き続き、化学肥料や農薬などの生産資材の使用の低減でありますとか、省エネ設備の導入、耕畜連携による家畜ふん堆肥の活用と自給飼料の安定確保、生産コストを適正に価格転嫁できる環境の整備などの推進を国に働きかけますとともに、県としても必要な対策等を実施いたしまして、再生産が可能となる生産者の経営支援に力を尽くしてまいりたいと存じます。 ◆12番(松本利寛議員) (登壇)私は、そうした施策の下支えとして、基本的に、こういう時代だからこそ、日本の食料は日本の大地からと、そういう方向性を基本に、食料自給率の引上げを農業政策の喫緊の重要課題として進める必要があるというふうに思います。  世界的な食と農の危機を前に、食料自給率の引上げがますます重要になっているというふうに考えますが、知事の認識を伺います。 ◎知事(三日月大造) 令和2年3月に策定された国の食料・農業・農村基本計画におきましては、カロリーベースの食料自給率を平成30年度──2018年度の37%から令和12年度──2030年度には45%に引き上げる目標を設定しています。食料自給率につきましては、国内生産だけではなく、食料消費の在り方等によって左右されることを踏まえて定められているところでございます。  国内自給率の向上はもとより、県民の皆様が食べるものは、県内で生産され、生産者が使用する資材もできる限り県内で調達できる地産地消の取組が大変重要であると認識しております。 ◆12番(松本利寛議員) (登壇)ところが、その逆行が促進されかねない状況が引き続いて惹起しています。  1995年のWTOウルグアイラウンドで、農産物を工業製品と同列に置き、自由貿易を口実に米の輸入が開始をされました。これ以後、毎年77万トンものミニマムアクセス米、いわゆるMA米を輸入がされています。以後、TPP、FTAの実施で、様々な農産物の貿易障壁の撤廃、関税の引下げが行われ、食の海外依存が加速され、食料自給率が一貫して低下をしてきました。  ガット・ウルグアイラウンド、TPP、FTAなど貿易自由化一辺倒を見直し、食の海外依存からの脱却が急務だと考えるんですが、知事の認識を伺います。 ◎知事(三日月大造) 大きな方向性は私も共感を持ちます。  議員御指摘の食料自給率は、1995年WTO協定時は43%でありまして、その後、40%程度で推移をしております。先ほども申し上げたとおり、この食料自給率は食料消費の在り方等によっても左右されることを踏まえますと、貿易自由化のみが自給率の低下に直接的な要因であるとは言えないと認識しております。  食料・農業・農村基本法におきましても、国民に対する食料の安定した供給は、国内での農業生産の増大を基本としつつ輸入等を組み合わせなければならないとしていることを踏まえ、県内で可能な限り生産力を高め、食の安定的な確保に努めることが重要だと思います。当然、市場を世界、海外に求めていくということも有効なことでもあると考えております。 ◆12番(松本利寛議員) (登壇)ところが、WTO以後、米の過剰を口実に減反政策がずっと継続される一方で、1995年に43万トンものMA米が、それ以後、1999年からは毎年77万トンものMA米が輸入されています。77万トンといえば、滋賀県の米の生産量の約6年から5年分です。それが毎年輸入されると。そのMA米ですが、今、アメリカ国内で米の価格が高騰をして、円換算で5キロ3,600円、何と1俵4万円になる計算になっています。干ばつと輸出による品薄がこの原因のようであります。  9月16日に実施されたMA米の入札価格は、アメリカのうるち精米中粒種が1トン当たり25万4,000円、1俵60キロの玄米に換算すると何と1万6,764円と、21年産米の国内の相対取引の平均価格1万1,884円を大幅に上回っています。このMA米は、かつては加工用米として政府が販売をしていたんですが、国内産米の価格下落に拍車をかけるとされ、現在は77万トンの80%が飼料用米として輸入をされています。国内の飼料米と競合をしてるんです。しかも、MA米の輸入価格と販売価格の差は、保管、運送料金を含めて毎年300億円もの赤字を計上しています。21年度の一般MA米の買入れ価格は800億円です。  高騰しているMA米を漫然と輸入し続ければ、赤字はさらに膨らみます。MA米は輸入機会の提供であって、輸入してもよいという程度のものです。輸入義務ではありません。これが国際ルールであり、日本政府の見解が特異になっています。こうしたMA米に係る経費は全て税金であり、全くの税金の無駄遣いです。このMA米の見直しについて知事の所見を伺います。 ◎知事(三日月大造) このミニマムアクセス米──MA米については、ガット・ウルグアイラウンド以降、WTO加盟国の合意に基づきまして、最低限の輸入機会を提供する一方で、国内の主食用米の価格に影響を与えないよう国家貿易として行われているものでございます。  このミニマムアクセス米の運用につきましては、国際ルールの下で、国内農業の国際化を図る外交手段の一つとして国が進めているものでございまして、当然、気候の変動による、価格の変動による見直しということは必要だと考えますので、この見直しについてはWTOや国会等の場において議論されるものと承知をしております。 ◆12番(松本利寛議員) (登壇)私は、地域の農業者の声として県が政府にこのMA米の見直し、今日の状況に合った中身に改善するということを求めるべきだというふうに思います。  次に、米以外の問題に移ります。ここに東近江市の池田牧場が作成をされたジェラートの宣伝ダイレクトメールがあります。  一部紹介しますが、「今年から来年にかけて廃業を考える酪農家の仲間がたくさん出てきました。後継者の不足、輸入飼料の高騰、水道光熱費の値上がりなど多岐にわたります。食料と資源を持たない国がどうなるか見えてきたような気がします。気がついたら日本の酪農が激減していたということにならないように祈ります」、こういうふうに宣伝のダイレクトメールに手紙が添えられています。これが今の日本の置かれてる酪農の現実であります。  今年2月以降の10か月で、県内42の酪農家のうち6軒が廃業をされています。こうした中で政府は、来年度、生乳の生産過剰を口実に1頭15万円の補助金をつけて、乳牛の飼養頭数の削減を打ち出しています。生乳の余剰を生んだのは、数年前、バター不足から乳製品輸入が急増し、現在でも相当の乳製品の輸入が続いています。ところが、今、生産過剰を言い出し、乳牛の飼養頭数の抑制です。飼料高騰中、生乳価格が10円/キロ当たり引き上げられましたが、焼け石に水の状況です。  今、日本全国で酪農の危機が危惧をされています。知事はこうした畜産、酪農の現実をどういうふうに認識をされているのか、伺います。 ◎知事(三日月大造) お尋ねいただいた酪農経営につきましては、全国の生乳の取引価格がこの11月から引き上げられましたものの、経営コストの約5割を占める飼料費などの高騰が続いており、依然として非常に厳しい状況にあると認識しております。  このため、県といたしましても、本定例会議で、粗飼料等の緊急支援のための予算をお願いしているところでございますが、生産コスト低減のためには自給飼料の生産拡大に向けた取組が重要でありますことから、耕畜連携の取組を一層進めてまいりたいと存じます。  酪農をはじめとした本県の畜産業を守るためにも、引き続き畜産を取り巻く様々な動向等を注視いたしまして、国の動きも踏まえながら、必要な支援策を検討し、また、実施をしてまいりたいと存じます。 ◆12番(松本利寛議員) (登壇)その必要な支援策なんですが、私は、主食であり日本農業の生産の大黒柱である米も、そして酪農をはじめとした畜産も危機に立っていると。この危機を打開するためにも、国内の農業を保護し奨励をする農業政策に大転換する必要があるというふうに考えています。  そのために、生産費を賄える価格保証、支持価格制度を創設することや、農業者や農業法人の経営を安定させる、農業の環境、国土保全機能に着目をした所得補償制度を構築する必要があるというふうに考えるんですが、知事の所見を伺います。 ◎知事(三日月大造) 大切な農業経営の安定のためには、生産費が賄える適正な価格で農産物が販売され、担い手の所得が確保されることが重要であると認識しております。しかしながら、肥料や飼料などの生産費が高騰する一方で、農産物価格は市場原理で決まり、コストの増加分が農産物価格に転嫁できず、農業経営に大きな影響を与えているという現状がございます。  こうした情勢変化も踏まえ、現在、国の食料・農業・農村基本法の見直しに関する審議会におきまして、生産、流通、販売などの関係者が参加する価格形成の仕組みづくりでありますとか、法人化や雇用確保などの担い手の経営基盤強化の在り方などについて検討がされていると承知をしておりまして、こうした国の動向も注視しながら県の方向性を探ってまいりたいと存じます。 ◆12番(松本利寛議員) (登壇)私、改めて、アメリカも含めてヨーロッパも、この価格保証や所得補償が農業政策の基本に据わっているというふうに思います。改めて、国の動向も踏まえて、地域の農業者の声としてこういう施策の実施や拡充に向けて努力をいただきたいというふうに思います。  最後に、地球温暖化の下で、気候変動やコロナパンデミック、ロシアのウクライナへの軍事侵略、記録的な円安等の下で進行する食と農をめぐる危機を打開するためにも、日本の食料は日本の大地からを基本に据えた農と食を守る農政への大転換が必要と考えるものですが、こうした農政を県政の柱に据えるとともに、国に政策の転換を求めることについて、知事の認識を問います。 ◎知事(三日月大造) 昨年度、コロナ禍の経験も踏まえて策定いたしました滋賀県農業・水産業基本計画におきましても、食と農を守り生かすことが非常に重要であることから、県民みんなで創る 滋賀の「食と農」を通じた「幸せ」を基本理念に掲げ、施策を推進しているところでございます。  この基本理念に沿って、これからも本県の農畜水産業を持続可能な形で未来に引き継いでいくため、国の動向等も注視しながら、県としても生産者や消費者の皆さんのお声をお聴きしながら、必要な施策等をつくり、また講じてまいりたいと存じます。 ◆12番(松本利寛議員) (登壇)先ほど申し上げました永源寺の池田牧場、第3次産業というそういう構えで頑張っておられるんですが、いかんせん国際情勢と日本の農政の下で今の畜産が非常に危機に瀕している、後継者が育たない、次々に仲間が廃業していくと、そういう実態だということを告発をしておられます。  改めて、やっぱり農業農村の基本的な維持を進めようと思えば、所得政策、価格政策、これ以外にないというふうに思います。ぜひそうした方向で国の政策が大転換できるように、県も引き続いて努力をしていただくということを申し上げて、質問を終わりたいというふうに思います。(拍手) ○議長(岩佐弘明) 以上で、12番松本利寛議員の質問を終了いたします。  次に、44番中沢啓子議員の発言を許します。 ◆44番(中沢啓子議員) (登壇、拍手)それでは、通告に従いまして、3項目、分割で質問させていただきます。  まず、消費者行政と消費生活センターについて、以下、お伺いをいたします。  滋賀県では、消費生活に関するトラブルなど、滋賀県消費生活センターと市町の消費生活の相談窓口とで相談を受け付けています。滋賀県消費生活センターは昭和46年4月に彦根市に開設し、本年、51周年を迎えています。当初は、お土産が試食で購入した見本と違うことや、マヨネーズの容器から有害物質が出るか調べてほしいなど、商品そのものの安全性などに関する相談が多かったようです。最近は、偽サイトや定期購読に関してなど、インターネット上でのトラブルが発生しています。  滋賀県の消費生活相談に関して、現状を総合企画部長にお伺いをいたします。  クーリングオフなどに関しては、消費者から頼んで来てもらったのか業者から来たのかなどによって、適用される、適用されないなど、その状況によって違います。滋賀県消費生活センターでは、鍵開けの依頼をしたら想定外の作業をされ、高額の請求をされたとの相談をきっかけに、対応に取り組まれました。その後、それまで判断が分かれていた鍵開けに関して法解釈を変えることができ、消費者を守れるようになるなどの成果も上げられておられます。  インターネット上のトラブルに関しては、どのような状況でサイトにアクセスをし契約をしたのか、本人も分からなかったり、調査が必要になるなど、対応が始めるまでの調査が大変になっていたり、相談内容についても、10年前の1件と現在の1件は質が違い、とても時間がかかることが多い状況がうかがえます。  消費者庁が平成21年に発足し、消費生活相談員の資格は平成26年に国家資格となりました。平成31年には指定消費生活相談員も導入されましたが、残念ながら滋賀県にはおられません。  滋賀県消費生活センターの役割を総合企画部長にお伺いをいたします。  あわせて、インターネットを通じたトラブルなど、若い方や高齢者への消費者教育も大事です。消費者トラブルの予防のための広報や相談員に対するカスタマーハラスメントの防止のために、消費生活センターの役割などを正確に知ってもらうことも大切だと思います。  消費者教育や広報についての取組について、併せて総合企画部長にお伺いをいたします。  消費生活センターは、相談や消費者教育を中心として、人材が要です。問題のある業者は、県の消費者行政の動きを見て、取組の甘いところに行くと言われているようです。  相談員の皆さんは使命感を持って取り組んでいただいています。専門性が高く、範囲も広く、資格取得後も自己研さんが必要ですが、給料に見合わないとも言われています。残念ながら、多くは会計年度任用職員であり、スペシャリストとしての待遇とは言い難い状況にあるのです。このような状況において、全国で相談員が不足しており、滋賀県でも相談員が、10人の定数にもかかわらず3人欠員という状況です。そのため、1人の担当の件数は昨年と比べて約1.5倍にもなっているそうです。消費者相談の内容が難しくなり、量も多くなっている状況をどのように捉えておられるのでしょうか。  本年3月には、消費者庁から地方消費者行政強化交付金要綱の総額等についての通知も出されています。また、滋賀県消費生活センターの相談員の高齢化も気になるところです。人材を確保し育成していくことが求められると考えます。今後の消費者行政を考えれば、長期的な視点も踏まえて滋賀県消費生活センターの課題と今後の取組を早急に検討すべきと考えますが、知事のお考えをお伺いいたします。 ○議長(岩佐弘明) 44番中沢啓子議員の質問に対する当局の答弁を求めます。 ◎知事(三日月大造) (登壇)4点の御質問、最後にいただいたんですけど、私からまずお答えさせていただきます。  県センターは、広域的かつ専門的な案件に対応するとともに、市町への助言や支援など、中核センターとしての役割を果たしております。その相談業務を担っている消費生活相談員は、複雑化する相談に対応し、重要な役割を果たしておりますが、全国的に相談員の高齢化や人材不足が問題となっている中、県センターにおきましても欠員状態が継続しておりまして、相談員の安定的な人材確保と育成が課題となっております。  このため、相談員の担当業務や勤務シフトの見直しなど、できる限り相談員の負担軽減を図ってきたところでございますが、安定的な相談体制の構築のためには、さらに相談員が継続して働けるような環境を早急に整え、人材確保につなげていく必要があると考えております。  こうした課題に対応するため、今後、勤務条件の見直しなどの処遇改善について検討を行っていくとともに、相談員が常に専門的な知識を習得していけるよう、引き続き研修の機会を確保し、将来を見据えた人材育成にも取り組んでいく必要があると考えているところでございます。 ◎総合企画部長(東勝) (登壇)消費者行政と滋賀県消費生活センターにつきましての4点の御質問のうち、私にいただきました3点の御質問にお答えをいたします。  1点目の滋賀県の消費生活相談の現状についてでございますが、令和3年度に県内の消費生活相談窓口に寄せられました相談件数は1万1,913件でございまして、そのうち県消費生活センターに寄せられました相談件数は3,394件となっておりまして、全体の28.5%を占めております。  ここ数年の県内の相談件数の推移を見ますと、平成30年度から減少傾向となっておりますが、近年、スマートフォンの普及に伴いまして、定期購入のトラブルや商品が届かないといったインターネットでの取引に関連した相談が増加をしております。その代表的なものといたしまして、インターネット通販に関する相談でございますが、平成30年度の933件から令和3年度は1,817件と、約2倍に大幅に増加しているところでございます。また、インターネットでの取引に関する相談の特徴といたしまして、契約内容が容易に確認できないことや、事業者と連絡が取れないことで解決に時間がかかるなど、対応が困難な相談も増加している状況にございます。  次に、2点目の県消費生活センターの役割についてでございますが、県センターでは、消費生活相談対応、消費者教育、事業者指導の3つの柱で業務を行っております。相談対応におきましては、市町では解決が困難な相談や市町をまたがる広域的な案件を中心に、専門性を用いた助言やあっせんを行っているところでございます。また、消費者の被害防止のため、各種セミナーや消費生活フェスタなど、幅広い年齢層を対象とした消費者教育、啓発に取り組んでおりますほか、相談で得た情報を端緒に事業者に対して指導や処分を行っているところでございます。  さらに、県センターは、県内の消費生活相談窓口の中核センターといたしまして、県全体の相談体制の充実、強化を図るため、市町の相談窓口への巡回訪問や研修機会の提供を通じた人材育成を行うなど、消費者行政におきまして重要な役割を果たしております。  最後に、3点目の消費者教育や広報の取組についてでございますが、近年、消費者被害が多様化し、あらゆる年代に広がっておりますことから、県民一人一人が自ら考え行動する消費者になっていただけますよう、様々な学びの機会を提供していく必要があると考えております。  そのため、消費者教育といたしましては、地域や学校において、高齢者の消費者被害の状況や、成年年齢引下げの法改正などを踏まえた出前講座の実施や動画の提供などにより、消費者の特性に応じた教育を推進いたしますとともに、県民の皆さんに消費生活センターの役割を正しく知っていただき、その活用についての理解促進も図っているところでございます。  また、広報につきましては、消費者の年齢層に配慮した情報発信といたしまして、しらしがメールやツイッターといった広報媒体の活用に加え、宅配事業と連携した啓発資料の配布など、さらには、それに加えまして、新たにインターネット広告を活用し、最新の悪質商法等の手口や対処法を紹介するとともに、相談窓口の周知も図っているところでございます。  今後も引き続き、消費者の取り巻く環境の変化に合わせまして、より効果的な消費者教育や広報を積極的に進めてまいります。 ◆44番(中沢啓子議員) (登壇)様々、本当に相談業務は大変だという状況がよく分かりました。県民の消費生活をしっかりと支えていただくためにも、やっぱり近隣の府県の状況も参考にしていただきながら、しっかりと処遇改善をして、その相談をしていただく方々が働くことに気概を持てるというか、使命感だけではなく、しっかりと処遇改善もしていただくようにお願いして、次の質問に移りたいと思います。  次に、滋賀県防災航空隊について、以下、知事公室長にお伺いをいたします。  滋賀県は、日本最大で最古の湖である琵琶湖の周辺を、伊吹山、鈴鹿山脈など1,000メートル級の山々が連なり、琵琶湖国定公園をはじめ、数々の自然公園を有しています。特に県内の山岳地は、都市圏からのアクセスがよく、初心者から上級者まで幅広く親しまれていますが、それに併せて滑落や道迷いなどの遭難事故が多発しています。琵琶湖でも、天候の急変などにより水難事故が多発したり、春先など空気が乾燥する季節には林野火災への対応など、滋賀県防災航空隊は多種多様な災害に危険な現場で活動していただいていることに感謝をしています。まず、滋賀県の活動状況をお伺いいたします。  防災航空隊は、滋賀県が機体の所有と運営を、操縦、整備、運航管理を運航委託会社に委託し、県内各消防本部から防災航空隊員の派遣をしていただき運航されています。市町と協定して防災航空隊員を派遣していただいていますが、その目指すところをお伺いいたします。  防災航空隊員は人命救助などに取り組んでいただいており、感謝をしておりますが、残念ながら、昨年度から防災航空隊員によるパワーハラスメント事案が発生し、9月に懲戒処分が行われました。報道発表資料によると、太ももを拳でたたくような行為などの暴力行為や、職務適性を否定するような発言を繰り返し行ったとのことです。緊急対応が求められる現場ですから、チームワークが大切です。特に、それぞれ違う県内各消防本部からの派遣ですから、お互いに配慮しながらチームワークをつくり上げることが大切だと考えます。指導や振り返りは、当然、チームですべきであり、個人的に暴力を振るうことはあってはならないことです。  防災航空隊は、地上での消防や救助よりもさらなる危険が伴うため、今後このようなことが起こらないようにどのような対策を取られるのか、お伺いいたします。  また、防災航空隊では、地上での消防活動とは違う多くの新たなことを覚えなくてはならなくて大変だとも仄聞をしています。慣れない場所で新たな仲間と新たな仕事に従事するに当たり、さらなるマニュアルの整備や、時間的にもしっかりと新たな知識や技術を身につけるための環境の整備も大切だと考えます。  この際、防災航空隊での仕事や体制の検証と環境整備について検討すべきと考えますが、知事公室長のお考えをお伺いいたします。 ◎知事公室長(中嶋毅) (登壇)滋賀県防災航空隊についての4点の御質問にお答えいたします。  まず、1点目の活動状況についてでございますが、過去5年の災害出動件数の推移を見ますと、平成29年度および30年度はそれぞれ66件、令和元年度および2年度はそれぞれ82件、令和3年度は96件と増加傾向にございます。令和3年度の災害出動件数96件の内訳は、山岳救助が54件、救急搬送が35件、水難救助が5件などとなっております。なお、林野火災につきましては、過去5年では、平成30年度と令和元年度にそれぞれ1件の実績がございます。  2点目の、市町と協定しての隊員の派遣の目指すところについてでございますが、防災航空隊は、個々の市町消防では対応が困難な上空からの消火や救助活動等を行うため設置しており、地上での消防活動と連携し、防災ヘリによる活動を行うことにより、消防防災体制の強化を図るものでございます。  こうした高度な技術を要する任務を円滑に遂行するため、消防の現場経験が豊富で有為な人材を各消防本部から派遣していただいております。派遣経験者からは、業務経験を通じて、消防職員として安全管理の徹底や意思疎通の重要性等に関する認識を深めることができたということも聞いているところでございます。  各消防本部からの派遣により、防災航空隊での活動を通して消防職員としての資質を高めることができるとともに、派遣終了後は消防本部間の連携にも寄与でき、県域全体の消防防災体制の充実、強化につながっていると考えているところでございます。  3点目の再発防止策についてでございますが、防災航空隊における指導は、日々の訓練終了後の振り返りにおいて、隊員が一堂に会し、行っているところでございますが、今回の事案では、本来の指導に加えて上席の隊員が単独で新隊員に対して指導を行う中で、パワーハラスメントに至ったものでございます。  今回の事案を受けまして、防災航空隊におきましては、隊員皆で話合いを行い、また、各消防本部の意見も聞きまして、本年8月に、隊員が活動していく上で遵守すべき滋賀県防災航空隊行動指針を策定したところでございます。この行動指針には、相手にとって最も効果的な指導方法を常に考えること、個人的な感情による理不尽な罵倒や暴力を振るうことは許されないこと、常に指導方法の改善に努めることなどを定め、全隊員に徹底しているところでございます。  加えまして、隊員への指導に当たりましては、原則としてチームで実施している訓練後の振り返りの中で完結すること、訓練中に個別の指導をする必要がある場合は複数の隊員で行うことをルールとして確認し、活動をしております。  防災航空隊において安全かつ確実に任務を遂行していくためには、何よりチームワークが大切であります。一方で、困難、危険を伴う中で重責を担うため、指導内容の徹底を図ろうとするがゆえに、ともすればパワーハラスメントが起こりかねないというリスクも潜んでいるものと考えております。  こうしたことを隊員一人一人が常に意識して行動するとともに、関係する我々職員も十分留意して隊員の勤務状況の把握等に努め、今回のようなことが二度と起こらないよう万全を期してまいります。  4点目の、防災航空隊の仕事や体制の検証と環境整備についてでございますが、議員御指摘のように、防災航空隊の活動は地上での消防活動とは異なり、その職務を果たせるようになるためには、様々な訓練を積み重ね、知識や技術を確実に習得する必要がございますことから、新隊員にとっては不慣れな環境の中で大きな負担となっているところでございます。このため、業務内容や体制を改めて検討の上、新隊員の負担軽減を図りつつ、必要な知識や技術の習得に専念できる環境を整える必要があるものと認識しております。  これまでからも、事務的な業務につきましては行政職員が担うなどの負担軽減に取り組んできたところでございますが、新隊員の訓練の内容や進め方についても、習熟度に応じてカリキュラムの進度調整を行うことなどを検討しているところでございます。また、改めて上席の隊員から各隊員への日頃の目配りに努め、状況に応じて小まめに声かけをするなど、風通しがよく隊員同士で高め合える職場づくりに取り組んでおります。  こうしたことで、隊員からは、自分の意見を周りの人に伝えやすくなった、話を聞いてもらいやすくなったという声もお聞きしております。  今回の事案を教訓に、防災航空隊としての使命をしっかり果たしていけるよう、仕事の進め方、活動や指導の在り方について不断の検証を行いながら、ハラスメントがなく、隊員が持てる能力を存分に発揮できるよう取り組んでまいりたいと考えております。 ◆44番(中沢啓子議員) (登壇)おっしゃるとおり、各消防本部からは、本当に将来有望な大切な職員さんを市町の人件費で派遣していただいています。それぞれ違う市町から来られているのですから、様々な違いもあることだと思いますけれども、やっぱり、危険を伴うという現場だということを考えれば、先ほどから言っているように、チームワーク、ワンチームで活動できるように、お互いに認め合いながら活動することが求められていると思っています。  今回、顕在化しましたけれども、よく言われるのは、顕在化する事情は氷山の一角だということも言われます。先ほどもおっしゃっていたとおり、単独で指導を行う中で様々なことが起こるかもしれないというお話をされたんですけれども、暴力というのは私はあってはならないと思っていますし、様々なことに関して、やはり言葉でもやっぱり否定をしていくということは決していいチームになることではないと思っています。だからこそ、今回、まずこういう懲戒処分ということをされたんだと思うんですけれども。  スポーツでもよくあるんですけれども、今までそうやって習ってきたということであったりとかということで、なかなか体罰がなくならないということがありました。今は、スポーツはやっぱり体罰はよくないということで、どうしっかりできるのかということを指導をちゃんとしていくということが求められるというのは、もう通常のことになったと思うんですけれども、まだまだ様々なところで、経験を基にということで、意識が変わらない、変わりにくいということもあろうかと思います。でも、やはりそこはしっかりと意識改革をしていくということが非常に大事なんじゃないかなと思っています。  先ほどおっしゃった滋賀県防災航空隊の行動指針をつくっていただいて、非常にいいことだと思うんですけれども、それは航空隊だけではなくて、やはり消防の皆さんの現場でもそうでしょうし、それが壁に貼られただけに終わらないように、しっかりとそれを、取組を進めていく、そしてまた、隊員の変化にしっかりと気づくという感性も私はすごく必要なことだと思います。大切な職員さんをお預かりし、そしてまた、しっかりと指導していくということが県にも求められていると思いますので、今後パワハラが起こらないような適切な指導をしっかりできるように、また、隊員が安心して仕事に従事できるように、各消防本部が安心して大切な消防隊員さんを派遣できるように、今回の事件を契機に安心・安全の取組を進め、そしてまた、職場の環境改善を進めていっていただきたいと思います。  ぜひもう一言だけ、決意を述べていただけたらと思います。 ◎知事公室長(中嶋毅) お答えいたします。  防災航空隊においては、非常に僅かな認識のずれ、あるいは、手順あるいはタイミングのずれによって危険を伴う中で、安全かつ迅速に、また効果的な救助、救援活動を行っていただいておるところでございます。  その中で、一定のしっかりした規律の下で確実に業務を行うということではございますが、先般から御意見ございますように、隊員のチームワークというのは不可欠でございます。極めて緊張感の中で活動をしていただく中ではございますけれども、隊員間の良好な関係の構築というのは欠かせないものと認識しております。そのことは、防災航空隊として今回定めました行動指針の中にも、暴力は決してあってはならないということは当然のこととして、隊員同士の風通しのよい職場環境の醸成、そして何より、職場における隊員同士のコミュニケーションの状況であるとか、その変化にも敏感になるということを全員で確認をしているところでございます。  そういった意味で、我々県としましても、防災航空隊において、しっかりとした活動が展開され、それに必要な環境整備が整えられ、それを通じて、隊員の資質の向上、そして、安心して消防本部から派遣をいただけるということ、形となるよう全力を尽くしてまいりたいと考えております。 ◆44番(中沢啓子議員) (登壇)ぜひ具体的なこととしてしっかり取り組んでいっていただきたいと思います。  次に、芹川等の治水についてお伺いをいたします。
     最近は、線状降水帯などにより、様々な地域での水害が激甚化、頻発化しています。2月の一般質問に対する土木交通部長の答弁では、「県内河川における気候変動に伴う降雨量変化の分析、県管理河川における治水計画の見直しの考え方の検討をし、対応方針を定める」との趣旨の答弁をいただきましたが、気候変動の影響を踏まえた治水の対応方針について、知事にお伺いをいたします。  芹川は、400年前、江戸時代の初期に西側への備えとして築堤し、川を付け替えたと言われています。住民の安全のために何度となく質問させていただき、御対応いただきありがとうございます。  芹川は、堤防が決壊することで大きな影響が出る河川であるTランク河川と位置づけられ、堤防強化が進められています。また、芹川は、滋賀県の河川整備方針において、将来にわたって目指すべき安全基準を100年確率の降雨に対応することを目指されています。  芹川の下流では、大水が出ると土砂が堆積します。特に昨年の台風の折には、芹橋から後三条橋の間で、万灯流しの準備で河床の草が刈られたところのすぐ下流では、流れが緩慢になっていました。水が引いた後は多くの土砂で河床が高くなっており、びっくりをいたしました。芹川の下流の流下能力を考えれば、次の洪水期までのしゅんせつが必要です。  芹川の流下能力の確認方法とその対応について、土木交通部長にお伺いいたします。  また、老朽化した護岸についても、不安を感じておられる住民もおられます。昨年御答弁いただきました堤防強化につきましては住民説明会を開催していただきましたが、堤防強化の取組の内容と進捗、今後の課題について、併せてお伺いいたします。  また、令和3年11月に特定都市河川浸水被害対策法関係が改定されました。「河道掘削や放水路、遊水地の整備などの検討や、さらに国の貯留機能保全区域制度の活用なども含め、様々な手段を組み合わせ、実現可能性も見極めながら、効率的、効果的な対応を検討いただく」との答弁をいただきました。  芹川に関しては、Tランク河川として、破堤しにくい堤防になるよう堤防強化に取り組んでいただいていますが、流下能力が上がるわけではありません。現在の雨の降り方、水の出方を考えれば、少しでも河川全体の流下能力を上げていただきたいと思います。洪水に対する対応能力に関して、芹川における具体的な対応について土木交通部長にお伺いいたします。  あわせて昨年は、多賀町でも多賀小学校で床上浸水や校庭冠水などの被害が発生しています。四手川や太田川ではこれまでからも河川愛護活動などの対応もしていただいていますが、河川整備計画に位置づけられた河川だけでなく、これら小規模な河川についても地元支援を含めてどのように維持管理していくのか、土木交通部長に併せてお伺いをいたします。 ◎知事(三日月大造) 芹川等の治水というテーマで5点御質問いただきまして、私には最初の1問、気候変動を踏まえた治水の対応方針についてでございますが、激甚化する、頻発化する水害への対応といたしまして、治水対策の根幹である河川整備の強化が重要と考えており、気候変動を踏まえた治水計画の見直し方針について、学識経験者の御意見をお聴きしながら検討してきたところでございます。  県内における気候変動に伴う降雨量につきまして、河川の流域の規模を考慮いたしまして分析いたしました結果、増加する傾向であることを確認いたしました。このため、気候変動を考慮した降雨量が現行計画を上回る河川について、河川整備状況に応じた対応方針を定めたところでございます。  具体的には、新たに治水計画を策定する河川や暫定整備が完了している河川については、気候変動を踏まえた計画を立案することとし、暫定整備中の河川については、現行の河川整備計画に位置づけている整備メニューを加速させるとともに、できるだけ手戻りのない整備方法を検討することとしております。今後、この方針に基づき、河川ごとに対応を検討してまいります。  一方、計画規模を上回る洪水は起こり得ることから、引き続き、ハード、ソフト一体となった多層的な対策を講じ、どのような洪水があっても県民の生命を守り、甚大な被害を回避する、しがの流域治水を推進してまいる所存です。 ◎土木交通部長(門間俊幸) (登壇)芹川等の治水について、5点の質問のうち、私に対する4点の御質問についてお答えいたします。  1点目、芹川の流下能力の確認方法とその対応についてでございますが、芹川の流下能力につきましては、河川維持管理計画に基づき、定期的に土砂の堆積状況、立木の繁茂状況などを点検することや、測量を実施することにより確認しております。  河川内の土砂の堆積につきましては、今年度の点検におきまして、後三条橋上下流約500メートル区間で確認したことから、撤去を実施する予定でございます。  河川内の立木につきましては、今年度は、大堀橋下流150メートルの地点から東海道新幹線までの間、また、来年度以降は東海道新幹線から名神高速道路までの間、約1.6キロメートルの区間において伐採を実施する予定でございます。  引き続き、治水上、緊急性が高いと判断される箇所から、土砂の撤去、立木伐採の対策を実施してまいりたいと考えております。  2点目、堤防強化の取組の内容と進捗、今後の課題についてでございますが、堤防強化の取組の内容としましては、水の浸透による堤防の破壊を防ぐため、浸水した水を速やかに排水するドレーン工や、水の浸透を防ぐ遮水シート工の実施をすることといたしております。  堤防強化の進捗状況でございますが、ドレーン工につきましては、右岸、左岸合わせて980メートルを計画しており、そのうち右岸の中藪2丁目地先で40メートルが完了しております。また、遮水シート工につきましては左岸の後三条町地先で60メートルを計画しておりまして、令和5年1月に工事に着工し、次の出水期までに完了する予定でございます。  今後の課題につきましては、ドレーン工は、堤防沿いの生活道路を工事ヤードとして規制しながら施工する必要がございまして、沿道の皆様には生活への影響が生じることから、地域の皆様の御協力を得ながら実施してまいりたいと考えております。  3点目、芹川における洪水に対する具体的な対応についてでございますが、芹川の河川改修は、河口から国道8号旭橋までの4キロ区間を河川整備計画に位置づけまして、当面の整備規模として、戦後最大の洪水に相当するおおむね30年確率の降雨に対応するよう河道掘削を進めてきたところであり、中藪橋の抜本的な改修を除き、平成30年度に完了したところでございます。  今般、暫定整備が完了しました芹川につきましては、先ほど知事が答弁した方針に基づきまして、気候変動を踏まえた治水計画の検討を進めてきたところでございます。  検討の結果、気候変動の影響を考慮したおおむね30年確率の降雨に対応できるよう、河口から順次、上流に向け、さらなる河道掘削など、流下能力を向上させる対策を検討し、河川整備計画に位置づけた上で実施していきたいと考えております。  4点目、小規模河川における維持管理についてですが、河川の維持管理につきましては、出水後の河道状況を把握するとともに、巡視点検結果や市町からの要望等を踏まえまして、治水上、緊急度の高い箇所から、しゅんせつ、草木の伐開、護岸補修等を計画的に実施しているところでございます。  四手川では多賀町四手地先において、太田川では多賀町敏満寺地先において、令和5年度にしゅんせつを実施する予定でございます。  また、地域団体等が行います河川愛護活動に対し、県が市町と委託契約を結び費用を助成することや、河川愛護が活動しやすくなるよう川へ降りる階段の設置を行うなど、地域で御協力いただいている活動への支援を行っているところでございます。  四手川や太田川においても、川ざらえや除草など、河川愛護活動により住民の皆様の御協力をいただいております。今後とも、住民の皆様と連携を図りながら、適切な維持管理に努めてまいりたいと考えております。 ◆44番(中沢啓子議員) (登壇)どうもありがとうございます。  気候変動による降雨量の増加は本当に治水対策待ったなしの状況だと思っています。また、芹川については、平成30年度以降、抜本的な河川整備は図られてきませんでしたが、次のステージに移るということでお答えいただいたと思っております。今後、一日も早く河川整備計画に位置づけていただいて、実効性のある工事、しっかりと整備をしていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。(拍手) ○議長(岩佐弘明) 以上で、44番中沢啓子議員の質問を終了いたします。  しばらく休憩いたします。   午後0時17分 休憩    ────────────────   午後1時15分 開議 ○議長(岩佐弘明) 休憩前に引き続き、会議を開きます。  次に、17番山本正議員の発言を許します。 ◆17番(山本正議員) (登壇、拍手)視覚障害、聴覚障害の両方があるという盲聾という障害について伺います。  見えない、聞こえないという想像を絶する不自由な障害ですが、日本では定義すらされていません。また、社会的にあまり知られていない障害でもあります。厚労省の推計値では、全国で現在2万3,000人とも言われています。  そんな中、滋賀県の盲聾者支援は、通訳介助派遣事業、相談支援事業、生活訓練事業などがNPO法人しが盲ろう者友の会に委託されています。  平成30年12月に、初めて盲聾者支援について質問いたしました。以降、この間に支援や取組を様々進めていただきましたことに感謝いたします。当時は県全体で推定140人の方がおられる中、しが盲ろう者友の会に登録されている20人の方には通訳介助や生活訓練などの支援が届いていますが、残る100人を超えるほかの方については全く分からないという状況でした。  では、登録されている20人の方以外の盲聾者の方々は一体どんな生活をされているのか、御本人や御家族にはどんな悩みや困り事があって、どんな支援を必要とされているのか、何より通訳介助などの外出支援や相談支援などの公的な支援があることを知っておられるのか。全国的な仕組みがない中で、これらがどこにも把握されていないことから、前回の一般質問では、まずは盲聾者の方々の実態調査をしていただきたいとお願いしました。結果、翌令和元年度には滋賀県盲ろう者支援検討会議が予算化され、実態調査をはじめ、盲聾者の情報取得、意思疎通、移動に関する支援など、滋賀県における今後の盲聾者支援についての方向性が示されました。  その中から、コロナ禍によって遅れていた実態調査ですが、ようやく本年7月より始まっています。支援があることの周知と、御本人や御家族のニーズの把握について、まだまだ途上ではあると思いますが、ここまでの成果と課題を健康医療福祉部長に伺います。 ○議長(岩佐弘明) 17番山本正議員の質問に対する当局の答弁を求めます。 ◎健康医療福祉部長(市川忠稔) (登壇)お答えいたします。  実態調査についてでございますが、視覚と聴覚の両方に障害のある方を対象に今年7月から調査を開始しておりまして、これまでに81名に対して依頼を行い、そのうち調査に応じていただいた27名中22名に実施してきたところでございます。調査対象になられた方には高齢で基礎疾患のある方も多いことから、新型コロナウイルス感染症の感染状況を考慮しつつ、今年度中の調査完了を目指しているところでございます。  調査が終了した22名中16名は、加齢や病気により視覚、聴覚の機能が低下した方でございまして、補聴器や拡大鏡などの機器を活用され、意思疎通を図る方もおられますが、突然、重度の重複障害になられまして、意思疎通手段がなくなった人がいることも分かりまして、支援の在り方が課題であると考えております。  一方、手話や点字など意思疎通手段を獲得されている方や、獲得可能な方で盲聾者としての支援を受けられていなかった方が2名おられることが分かりまして、しが盲ろう者友の会につながったことは成果であったと考えております。 ◆17番(山本正議員) (登壇)ありがとうございます。成果があったということで、喜ばしい限りだと思います。引き続き面談での実態調査、よろしくお願いしたいと思います。  今回の調査は、まず、この手帳である、障害者手帳をベースに、110名の方、その中から始まっていったかと思いますが、ちょっとずれますけど、実は盲聾という定義がない中ですので、その人数、数字というものにずれがある、つまり、手帳を持っておられない方がおられるということもあります。そのお話を少しさせていただきたいと思います。  東京都の盲ろう者支援センター、そこのセンター長で、私たち会派は一度お出会いしてるんですけども、前田晃秀さんのお話を伺いました。東京都では、厚生労働省の推計値から単純に計算して約2,300人の方がおられる。そして、手帳を取得されているのはその中の820人ほど。また、センターに登録されて支援を受けておられるのは僅かに83人ということでした。この数字のずれをどう考えるのか。センター長は、「最も大きな要因は、恐らく盲聾者向けの支援の存在が御本人や御家族に知られていないことにある」と言われています。滋賀県の場合は推定で230人、手帳を取得されている方が110人、センターに登録されているのは20人ですから、やはりそこにも数字のずれがあるということ、そして、そこから今後の盲聾者支援につながる何かが見つかってくればよいかなと思います。まだまだ大きな課題があるということ、そのことをよろしくお願いいたします。  次に、検討会議の結果に基づいて、令和2年度にはおかげさまで滋賀県盲ろう者支援センターが開設の運びとなりました。盲聾者支援としましては大きな前進であると思いますが、ここでの現状と課題を健康医療福祉部長に伺います。 ◎健康医療福祉部長(市川忠稔) お答えいたします。  令和2年6月に、安土駅の近くに、盲聾者支援の拠点として滋賀県盲ろう者支援センターを設置いたしまして、相談支援や生活訓練等を行っているところでございます。  相談支援につきましては、令和2年度862件から令和3年度は1,453件と約1.7倍に増えていることに加えまして、生活訓練につきましても、盲聾者1名に対し複数の支援者が必要でございますので、複数の盲聾者に対し実施する場合には人数が増えまして、非常に密な状態になるなど、センターの広さについて課題があるというふうに聞いております。  また、実態調査で支援につながっていなかった方がいたことなどから、聾話学校や盲学校、聴覚障害者福祉協会、視覚障害者福祉協会等との連携の強化が課題であると考えております。 ◆17番(山本正議員) (登壇)ありがとうございます。狭いということで、今、御答弁いただきました。  盲聾者さん一人が移動するには、通訳介助の方がお二人つきます。ということは、お一人で3人が移動される。その方々が例えば二人来られたら6人の方、そこに支援センターの方が何人かおられて、合計するとかなりの数になりますが、この場所がやはりアパートの一室になりますので、なかなか広さが満たされないということで、そこを課題としていただきましたこと、ありがとうございます。  次に、盲聾者支援における今後の拠点整備について、現状と課題について、同じく健康医療福祉部長のお考えを伺います。 ◎健康医療福祉部長(市川忠稔) お答えいたします。  盲聾者支援の拠点である盲ろう者支援センターにつきましては、先ほど申し上げましたように、その広さについて課題があると聞いております。また、今年度の実態調査から見えた課題などを整理した上で、センターを委託しておりますしが盲ろう者友の会にも共有しまして、今後の盲聾者支援の方向性について話し合っていく必要があると考えております。  現状の事業展開の課題と将来展望をしっかり見据えて、今後の拠点の在り方を考えてまいりたいと存じます。 ◆17番(山本正議員) (登壇)ありがとうございます。現場の課題をしっかりと共有していただいておりますことに感謝いたします。ありがとうございます。  滋賀県盲ろう者支援検討会議で示された方向性の一つに、盲聾者支援拠点の設置による支援の総合的な推進とあります。先ほど答弁いただきましたように、今後のさらなるセンターの深化に期待しております。ぜひよろしくお願いいたします。  盲聾者支援については、日本では歴史も浅く、今もなお、明確な国の制度にのっとった仕組みはございません。盲聾という定義も存在しないことから、障害者手帳にも盲聾という障害の種別もありません。視覚障害と聴覚障害の2つの障害者手帳ということになります。  現在、盲聾者支援事業については都府県の幾つかが行っています。やり方は都府県によって違います。全国の全容は分かりませんが、分かる範囲では、東京都、神奈川県、大阪府、兵庫県、鳥取県が盲聾者支援事業に取り組まれています。そのほとんどが、NPO法人しが盲ろう者友の会のような当事者を含む盲聾者支援団体への委託という形で支援事業が行われていると思われます。  そこには、現場への予算となる財源、友の会のような支援業務を行う団体運営の財源は、県からの委託費がほとんどを占めています。この支援事業の委託費の中からこれまで人件費、運営費を捻出されてきたことから、全員がパート待遇となっています。正規職員とならないことから、新たに職員を採用し育てるというのは難しいと聞いています。  持続可能な支援体制とするためには、この人的体制について本格的なてこ入れが必要と思いますが、健康医療福祉部長の考えを伺います。 ◎健康医療福祉部長(市川忠稔) お答えいたします。  本年度の実態調査から関係機関との連携の強化などの課題も明らかになってきておりまして、調査結果を踏まえた支援の在り方について検討する必要があると考えております。また、相談支援業務につきましても、相談件数が大幅に増加するなど業務量の増加が見られます。  こうした中、障害者総合支援法に基づくサービスと一緒に盲聾者支援事業を実施しておられます東京都の事例も参考にしながら、人的体制も含め、盲聾者支援の今後の在り方について、しが盲ろう者友の会と一緒に考えてまいりたいと存じます。 ◆17番(山本正議員) (登壇)ありがとうございます。  持続可能な人的体制としては2つあるかと思います。1つは、高齢化する事務局職員と通訳介助者の人材、後継者を育てること。現状では、11名の事務局、そしてまた、コミュニケーションや移動支援を行う通訳介助者の登録は100名を超えていますが、既に実際に稼働されているのは30名ほどになっています。高い使命感で御活躍いただいております、この通訳介助者の皆様に改めて感謝申し上げたいと思います。  専門的な知識や触手話などの技術を取得できる、養成のためのプログラムとして、これまでも滋賀県では、通訳介助者養成事業、通訳介助者資質向上研修事業の予算が組まれていますが、大変な御苦労があると聞いております。今後ともよろしくお願いしたいと思いますが、この点につきましても健康医療福祉部長にお尋ねいたします。 ◎健康医療福祉部長(市川忠稔) お答えいたします。  今、御指摘いただきましたように、支援者の方の数がたくさんおられる中で、実働される方が非常に少ないということですし、年間の養成者数もそんなに多くなくて、年間5名とか4名程度でございますので、何より支援者の方が高齢化もされているということで、たくさんの支援者があってこそ通訳も介助も成り立ちますので、その辺りについて、やはり今後、意思疎通支援というのはどの障害でも大事ですけど、特に盲聾者については大事だと思いますので、養成支援には力を入れていかなきゃいけないと思っております。 ◆17番(山本正議員) (登壇)ありがとうございます。  そういった外出、通訳、介助の支援が、公的支援があるということが行き渡っていないのではないかということがやはりベースにありますので、今、御答弁いただきましたように、年間にこれだけの数という話ももちろんありますけども、そういったところの点もよろしくお願いしたいと思います。  そしてもう1つは、先ほど御答弁いただきました中の人件費の問題なんですけども、この支援体制の仕組みが友の会に委託という形になっているために、人件費という項目は当然ありません。委託費の中にある程度その部分が含まれていると思うんですけども、そこからやりくりしていただいているのが現状です。  支援事業に取り組まれている都府県の中で、東京都が唯一、御答弁にもありましたけども、補助という形でそれぞれの事業に対してそれぞれの人件費が支払われている。これは、何か事業をしてもらうに当たって、それに関する人件費、これ、コロナやらでよく見る支援事業でたくさん出てるはずなんですが、そういったことがなかなか予算がつかない。これ、東京都では14人の職員さんがおられるんです。滋賀県、11人です。14人の職員さんのうち、東京都では10人の方が正規職員です。それに対して滋賀県は全員がパートタイムということになっています。どうかこの点につきましても、いい道筋を御答弁いただきましたので、またぜひよろしくお願いしたいと思います。持続可能な人的体制の構築ですが、今後とも共有していただけたらと思います。よろしくお願いします。  次に、日本では、この盲聾という障害そのものの社会的認知が薄い中で、ようやく自治体ベースでの支援が進んできています。内容的には相談支援事業などが主たるものですが、支援の在り方や仕組みに決まったものはなく、まだまだこれからというところです。これまでは現状とその課題についていろいろと質問させていただきましたが、将来的な支援の在り方、目指す社会と照らし合わせて、この置き去りにされてきた感のある盲聾者支援について、知事に伺いたいと思います。  将来的には、盲聾という障害があっても、望まれる方には、教育をはじめ、社会参画の道を合理的配慮の一環として用意しておくことが重要ではないかと考えます。もっと言及するなら、高齢者施設や医療機関にも対応できる専門的知見を持った体制が必要であると考えます。  そのためにも、盲聾者の方々への情報提供、情報取得、コミュニケーション手段の確保は日常的な支援として必要なものであり、私たちが目指す社会、共生社会の土台となるものだと思います。よって、センターをはじめ、その委託先であるしが盲ろう者友の会、通訳介助などの現状と課題につきましては、まだまだ現場の多くの困難や試行錯誤の中で途上にあることから、不断の見直しをぜひお願いしたいと思います。  そこで、糸賀イズム福祉先進県を誇る滋賀県としては、検討会議で示されたこの6つの支援の方向性を具体的に実現できる道筋を示して、盲聾者支援における全国他県のモデルとなり、日本一を目指すべきであると考えますが、滋賀県の盲聾者支援について、知事の見解を伺います。 ◎知事(三日月大造) (登壇)盲聾者は、コミュニケーション、情報取得、移動などに単独障害とは異なる著しい困難が伴いますことから、総合的な支援が実施できるよう盲ろう者支援センターを設置しておりますが、こうしたセンターを設置しておりますのは本県を含めて6都府県しかないということでございまして、その意味においては全国に先駆けた取組を行っているのではないかと捉えております。したがいまして、日本一を目指すというよりも、愚直にやるべきことを積み重ねていきたいと思っております。  議員も御指摘いただいた6つの支援の方向性につきましては、実態、ニーズ把握の調査の実施、専門相談窓口の利便性の向上、意思疎通、移動等に関する支援の充実と支援者の確保、地域の支援者へのサポートの実施、県民理解促進のための広報、盲聾者支援拠点の設置による支援の総合的な推進でございまして、この方向性に沿って施策に取り組んでおりますが、来年度実施いたします障害者プラン2021の中間見直しの中で、しが盲ろう者友の会から現状をお伺いして、取組の検証を行ってまいりたいと存じます。  人は1人では生きていけない、つながりの中で生きていると考えております。盲聾者の方々は、コロナ禍の中で触手話等も十分できずに日常生活に大変困られたということもお聞きしております。盲聾者の皆さんが社会としっかりとつながれるよう、誰一人取り残さない共生社会滋賀の実現に向け、取組のさらなる充実を図ってまいりたいと存じます。 ◆17番(山本正議員) (登壇)ありがとうございました。  話がちょっと替わりますが、日本国憲法は、その第26条1項において、全ての国民はひとしく教育を受ける権利を有すると規定しています。また、教育基本法では教育の機会均等が示されています。そして、2016年には障害者差別解消法が施行されました。これで物理的なバリアフリー等が示されたわけです。そしてまた、滋賀県障害者差別のない共生社会づくり条例においても、合理的配慮などについて行政機関の責務についての考え方が示されたところです。  これらは、機会は全ての人にあるべきであるということを具現化するよう社会を導くものだと思います。また、SDGsにも誰一人取り残さないとする考え方が示されています。知事が以前から口にされております、誰一人取り残さないという考え方です。  本年5月に、障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法というものが成立いたしました。全ての障害者があらゆる分野の活動に参加するためには、情報の十分な取得、そして利用しやすい環境、円滑な意思疎通が極めて重要であるとされています。中でも、誰もが同一内容の情報を同一時点において取得できるようにすることが基本理念に盛り込まれたことに注目しています。政府には財政面でもこれを十分にバックアップするよう義務づけていますし、同時に地方自治体の責務も示されました。  そんな中、盲聾者支援については、滋賀県では訪問による面談での実態調査が始まりました。全国的にもセンターは6か所ですが、この実態調査につきましても鳥取県以外にほとんど私は聞いておりませんので、先駆的であると思います。重い障害でありながら、他の障害者福祉の歴史に比して置き去りにされてきた感のある盲聾者支援です。様々な法整備が進んでいく中で、積極的な改革を念頭に取り組むことに対して、ちゅうちょすることはないと考えます。そして、いつの日か、全ての盲聾者の方々に、情報の取得しやすさ、意思疎通の手段、社会参画あるいは教育を受ける機会など、御本人が望む形で機会が選択できる共生社会の構築をしてこそ、真に誰一人取り残さないと言えるのではないでしょうか。  再度、先ほど御答弁いただきましたが、盲聾者支援を進めていくに当たり、さらには共生社会の実現を目指していくことについて、最後に知事のお考えを伺いたいと思います。 ◎知事(三日月大造) 先ほども答弁させていただいたとおりなんですけれども、一人一人を大切にする、そして、誰一人取り残さず、全ての人にとって、権利の保障でありますとか様々なサービスが受けていただける、そういう環境を整えていくということが重要なんだと思います。  したがいまして、例えば法律や条例に基づく様々な施策をしっかりと行うということですとか、それにはまだない情報コミュニケーションのツールを整備する、今、取組も、これは条例の制定という形でまず着手をしているところですし、先ほども部長が答弁いたしましたように、実態調査を現在進めております。  聞いておりますと、もともとこれぐらいいらっしゃるんじゃないだろうかという推計よりも少ない数の人数、さらには、そこからまたさらに少ない人数の方の調査の実施ということになっておりますので、実態という面でどこまでつかみ得るのかということは十分考えていかなければなりませんし、既にもうその中から分かってきたこともあるようでございますので、そういったことにどのように対応していくのか、また、御提起いただいたセンターの在り方等についても、今後、友の会の皆様方とよく相談しながら今後の方向性を見いだしていきたいと存じます。 ◆17番(山本正議員) (登壇)ありがとうございます。  日頃、担当課の方々と、そしてまた、現場である委託先のしが盲ろう者友の会の方々と、本当に密なコミュニケーション、そして意見交換、また、丁寧なヒアリングをしていただいていますことを感謝いたします。  私もその中に入らせていただいて何回か御一緒させていただいていますが、本当にこのことが、滋賀県で、あらゆる障害や病、あるいは事故、今回はこの盲聾者支援というものを取り上げておりますけども、やはり誰の身にも起こり得る、そして誰の大切な人にも起こり得ることだと思います。実際に伺っていただいて、人数は少なかったということもありましたけども、だけど、厚生労働省の推計値が、前回、僅か4年前で1万4,000人やったんです。それが2万3,000人に増えています。これは恐らく、高齢社会が進展することによって、人生の途中で盲と聾、重複障害になられたという方が多いかというふうに思います。  そういった中で、誰もが安心して暮らせる社会、あるいは社会全体で支え合える世の中の仕組みをつくっていきますことを、この滋賀県行政が全国に先駆けて、そしてまた、この議会でそういったことをお話しさせていただいて、また、知事がそういったお考えを示していただきますことに感謝いたしまして、今回の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)
    ○議長(岩佐弘明) 以上で、17番山本正議員の質問を終了いたします。  次に、25番海東英和議員の発言を許します。 ◆25番(海東英和議員) (登壇、拍手)それでは、通告に従いまして、日吉茶園の価値について、全問、知事に答弁をお願いして質問をいたします。  12月4日まで、京都国立博物館で茶の湯展が開催されておりました。コロナの第8波が心配される中、多くの茶の湯ファンが詰めかけられました。立ち止まって細かく見る人が少ない大きな年表には、日本の茶のルーツが滋賀県にあることが明記されていました。しかし、世間では、最澄の300年後に登場する栄西や明恵につながる京都の栂尾にある日本最古の茶園のほうが認知されているようなのであります。  びわ湖放送のコマーシャルの「最澄が伝えた。栄西が広めた。義政が愛し、利休が極めた。1000年の香り、千紀園のお茶」は、30年以上、びわ湖放送で放映してこられたことに敬意を表しつつ、この最澄が伝えたを全国に知ってほしいという願いを胸に、以下、びわ湖放送の飛躍も期待して質問いたします。  滋賀県こそが日本の茶の始まりの地である根拠は、1582年の安土桃山時代に祝部行丸によって書かれた「日吉社神道秘密記」に、西暦805年──延暦24年に永忠と最澄が唐より帰朝し、最澄が持ち帰った茶の実を日吉大社茶園に植えたと書かれていることにあります。さらに、勅撰国史で公式資料とされる「日本後紀」に、10年後の815年──弘仁6年4月22日、嵯峨天皇が近江唐崎に行幸された際に、梵釈寺で永忠から茶を献じられたと記載されています。ここに、茶の栽培の成功と茶の文化的行為の始まりを確認することができます。そして、この頃から天皇の命で畿内や近江、丹波、播州に茶樹を植えたとされており、宇治や栂尾はその後で、現代の茶どころの静岡や九州はもっと後と推測されます。  今回テーマとする、本当に日本最古の日吉茶園とはいかなるものか。西暦805年に最澄が唐から茶の実を持ち帰り、日吉大社茶園に植えたことはさきに触れましたが、現在の日吉茶園と同じ場所なのでしょうか。1571年──元亀2年の信長の山門焼き討ちの後、生源寺の僧がほぼ向かいの茶園の様子を書き残しており、約200年後の明和4年──1764年の「山門三塔坂本惣絵図」や、本日の掲示資料1の右下の図でありますが、江戸時代の中期以降に書かれた叡山文庫に収蔵されている「上下坂本略絵図」には、生源寺のほぼ前で、「御茶園」と書かれていますので、現在の日吉茶園に相違ないと思われます。  県は、日吉茶園が最澄以来1000年を超えてこの場所にあり続けているのかについて、どのようにお考えか問います。  茶園の茶の木に関しては、掲示資料2のとおり、滋賀県が108年前の大正2年に発行した「近江銘木誌」に、樹高2.7メートル、周囲約1.3メートルで、ほかに12株あり、その木は1000年の樹齢と推定され、巨壁と言うべきとあります。1000年の樹齢が推定される立派な茶の木が坂本村大字坂本御茶園にあったと記録されているのであります。しかし、掲示資料2の写真のように、現在の日吉茶園には「近江銘木誌」に記録された2メートルを超える茶の木は見られません。何かあったのでしょうか。  聞くところによると……。資料を掲示するのを忘れてました。すいません、お手元のタブレットも御参照お願いします。聞くところ、お茶の木の特性で、茶の木は樹勢が衰えると、若返りのため、台切り更新という手法で上部を地上10センチぐらいで裁断し、根を残したまま勢いのある芽を出させるということがあるそうです。もしそうなら、日吉茶園の茶の木が現在は1メートルほどであることが納得できます。  貴重な茶の木がなぜ天然記念物指定を受けていないのかと、滋賀県の公文書からアプローチされた方があります。記録によると、今から104年前の大正8年、坂本村を所管する滋賀郡役所が、文化財保護法の前身となる史跡名勝天然記念物保存法の照会調査に答え、茶の木を推薦されたようなのですが、その後がたどれません。同年には坂本村に日吉茶園保存会が設立され、茶園も滋賀県茶業協会に登録して、神域内製茶所での製茶が確認できます。特に4月の山王祭の献茶式や比叡山の儀式のほか、多くの祭礼で日吉茶園のお茶を献じ、1200年を超える祈りが続いていることに敬意と感謝をささげます。  さて、昭和16年に滋賀県知事が日吉茶園の茶を昭和天皇への献上品となるように取り計らった資料が、県庁資料室に保存されていると聞きます。進達文書の内容はどのようなものでしょうか。また、坂本村の茶の木の天然記念物調査の回答後の消息を見いだすことができないでしょうか、お伺いします。  日吉茶園や坂本の茶の木が、伝教大師最澄がお植えになった茶の木のDNAを継承している可能性を追い求めることは、千年ロマンです。中国天台山に由来するDNAが確認されれば、天然記念物の指定基準である、栽培植物の原木に相当すると思います。  静岡県では、茶の木のゲノム解析を県の予算で委託研究されていると聞きます。漏れ聞くところ、時代の違う静岡や九州の茶の木と日吉茶園のサンプルのDNAは系統が違うことが認められたようですが、正式な研究成果は未発表とのことです。  滋賀県でも、日本最古のお茶伝承プロジェクトの方々が坂本エリアで茶の木の分布調査などをしてくださっていると仄聞します。日吉茶園ならびに坂本に点在する茶の木、そして、滋賀県内に広まった茶の木を入念に分布調査し、最澄の植えた中国由来のゲノムが見いだせないか、現代の日本の茶の中の最古の系統が証明できないか、関心が募ります。  知事は、直営、委託、補助の実行方法はさておき、日本の茶の発祥の地の知事として、茶の木の分布調査やゲノム解析に対してどのようにお考えかを伺います。  次に、掲示資料1の右上の写真のように、日吉茶園が県道である都市計画道路比叡辻日吉線の拡幅事業に伴うセットバックで、100平米余りの茶園が半分ほどになり、茶の木が植え替えを余儀なくされると仄聞します。県道の拡幅で移植の必要な木は21本のうち何本になるでしょうか。茶の木は植え替えたら枯れると言われるのは、根がゴボウのように地中深くに伸びていく特性があるからと聞きました。そのことを踏まえ、最大限の注意力で植え替えを成就させなければなりません。前例のない立木補償です。日吉大社様の意向を尊重し、県は施工者の大津市を助け、歴史的な移植を成功に導いていただきたいと存じます。  道路管理者としてどのような親身な関与をしていただけるか、県の見解を問います。  道路拡幅に御協力願う日吉大社様は、全国に約3,800社ある日吉、日枝、山王神社の総本社で、滋賀県よりはるかに長い歴史をお持ちで、長きにわたり宗教法人として公益的な使命を果たしてきていただいており、衷心より感謝を申し上げます。  宗教法人の財産は、税制優遇なども受けられる代わりに、国民の財産として健全に保全する責務があり、茶の木が特別財産に該当するか否かなど、所管官庁としても適正な対応が求められます。遺漏なきよう、かつ親切に対応いただきたいと思います。  茶の木の植え替えは至難な業だそうですので、専門家や茶業研究所のノウハウの全てをつぎ込み、歴史的な移植事業が成功するようサポートするとともに、映像などで記録すべきと思います。ダムに沈む荘川桜の一大移植ドラマのように、歴史の証人として滋賀県も記録し、県民と共有することが大切と思います。道路行政以外の県庁のサポートはどのようなことが考えられるかを問います。  そして、茶園の持ち主である日吉大社様に、植え替えによって公益的財産である茶園の価値が損なわれないように、どのような配慮、協力をお願いしていかれるか問います。  さらに心配なことに、県道拡幅で削られて残る日吉茶園も、民間の開発事業で全てが移植される計画があるやに聞きます。現在の日吉茶園がなくなるかもしれないということに、茶の湯の関係者は愕然とし、息をのんで動向を注視しています。文化財保護と開発はいつの時代も難しい行政課題ですし、遺跡調査も注意力マックスで対応されると思います。滋賀県行政が日吉茶園の存続にどう向き合っていくか、注目されています。文化財的な観点と観光的な観点、そして滋賀県の意思をどのように整理して対応していくおつもりか、問います。  お金で買うことのできない日本最古の日吉茶園があるということ、茶の湯の文化の起源があることは、滋賀県のかけがえのない財産であり、魅力です。加えて、計画中の琵琶湖文化館の優れたコンテンツとなり得る事象です。例えば婆娑羅大名と呼ばれた佐々木源氏京極道誉から、琵琶湖の周りで展開された信長、秀吉、家康の活躍や、利休や織部や小堀遠州が展開した茶の湯、そして井伊直弼公創案の一期一会に至るまで、近江の国で様々に展開された茶の湯の文化を掘り起こし、積極的に活用して、滋賀ならではをパワーアップしていただきたいと願います。  例えば安土城で権力装置として用いられた茶の湯を450年記念事業で取り入れたり、文化財行政で出版物を作る迫力で整理されたいと思います。近江の心やインバウンド誘致にも効果的なコンテンツだと思います。全ては日吉茶園から始まったのです。この歴史的資源の学術面や観光面での活用に関して、知事の意欲を問います。  最後に、日吉茶園があるからこそ中国と茶のつながりが語れ、日本の茶文化の始まりの地を名のれます。新型コロナ感染症で際立つ日本人の清潔さや、ワールドカップで掃除をする、場を清める行為は、茶の湯文化の影響かもしれません。  東京上野の国立博物館開設150周年を記念する国宝展のサイド企画、150年後の国宝展では、ゴジラやポテトチップス、スーパーカブやガンダム、そしてたまごっちなどが展示されていて、国博、やるねと人気を博しているそうです。日吉茶園の価値を正しく認識し、いかに大切にして未来に渡していくことができるか、日吉が生んだ三日月知事だからこそできることがあると思います。未来を見据えての知事のお考えを問い、本席での質問を終わります。 ○議長(岩佐弘明) 25番海東英和議員の質問に対する当局の答弁を求めます。 ◎知事(三日月大造) (登壇)日吉茶園の価値について、8点御質問いただきました。  まず1点目、日吉茶園の所在地についてでございますが、江戸時代中頃の絵図に、現在の場所を含む広い範囲に「御茶園」の記載があるとのことから、今の日吉茶園は形を変えつつもその茶園を継承してきたものと考えているところでございます。  2点目、日吉茶園の茶の昭和天皇への献上および天然記念物指定への取扱いの消息についてでございますが、昭和16年5月10日付で、当時の日吉神社宮司から日吉茶園で摘み取った煎茶を昭和天皇へ献上したいとの申請があり、県から進達いたしましたところ、同年5月19日付で宮内省から、採納する旨、通知された記録が残っております。また、大正8年に史跡名勝天然記念物保存法が施行され、国から県を通じ、郡に対し指定候補を調査し回答するよう照会が行われた記録も残っております。この照会を受けて、大正8年10月の段階で滋賀郡役所からリストアップされた候補の中に、日吉茶園が含まれていることも確認しております。  しかしながら、その後、天然記念物として指定されてはおらず、その事情を知ることのできる資料は確認できておりません。  3点目のゲノム解析についてでございますが、近江の茶は、日吉茶園の碑に記されている、最澄が唐から日本へ茶を初めて伝えたことを根拠として、日本茶業発祥の地として、県内外はもとより海外へその魅力を発信しているところであり、日吉茶園のルーツを探ることは重要であると考えます。  茶のルーツを探るゲノム解析につきましては、静岡大学の一家准教授が、2019年から日吉茶園を含む全国の在来種の茶の葉を採取し、中国在来の茶との比較により、それぞれの在来種の来歴を調査研究されていると伺っております。この研究は日吉茶園のルーツを探る手がかりともなると考えており、結果を注視してまいりたいと存じます。  4点目、茶の木の本数と県の関与についてでございますが、都市計画道路の路線は県管理道路でございますが、大津市が、沿道の優れた町並み景観を形成するため、県道比叡山線沿道地区のまちづくりの一環として道路拡幅事業を実施しているものでございます。  お尋ねの本数につきましては、茶園全体の21本のうち、事業用地に係るものは半分程度の見込みであると伺っております。事業用地内にある茶の木につきましては、公共用地の取得に伴う損失補償基準に基づき、事業者である大津市において補償されるものと認識しております。県といたしましては、大津市から補償に係る相談がありました場合には、個別の事情に応じた評価の考え方について助言してまいりたいと存じます。  5点目の道路行政以外のサポートにつきましては、文化財保護行政の見地から、日本の茶の歴史を今に伝える日吉茶園の価値が将来へと引き継がれるよう、移植が行われる前の現況の記録を作成することについて、大津市と連携し、日吉大社様にも御協力と御配慮をお願いしてまいりたいと存じます。  また、植え替えにつきましても、その価値が損なわれないよう、茶業指導所をはじめ、でき得る限りの協力、サポートをしてまいりたいと存じます。  6点目、文化財的な観点、観光的な観点、滋賀県の意思をどのように整理していくのかということについてでございますが、日吉茶園の現在の在り方が変化していくことは受け止めつつも、由緒ある日吉茶園の価値を今後も地域の大切な歴史資産として継承するとともに、滋賀の魅力ある観光資源としても活用に努めてまいりたいと存じます。  7点目の、日吉茶園から始まる歴史資源の学術面や観光面での活用についてでございますが、日吉茶園周辺には、国宝の日吉大社西本宮本殿をはじめとした文化財建造物や、茶室を備えた旧竹林院庭園などの名勝庭園が多く所在をしております。また、県内には、甲賀市の朝宮や土山、東近江市の政所など、全国にも広く親しまれているおいしい茶の産地があり、茶の湯の発展とともに栄えた信楽焼をはじめ、茶にまつわる文化財も広く知られているところです。日吉茶園の価値をこれらのコンテンツと結びつけ、一体的に捉えることで、近江の茶を育んできた本県の歴史文化の価値を磨き上げ、その魅力を広く発信するなど、観光面での活用にも努めてまいりたいと存じます。  8点目、日吉茶園の価値を正しく認識し、高めていくサポート、手伝いということについてでございますが、県といたしましても、日吉茶園が近江の茶の歴史に関わる大切な地域資源であることを深く認識するとともに、大津市や地元の皆さんとも思いを共有し、その価値を広く発信して多くの人に知っていただくことで、地域の宝としての価値を高め、また、広めてまいりたいと存じます。 ◆25番(海東英和議員) (登壇)これは、一応、日吉大社様の管理下にあるものですし、よその者が勝手なことを言うのは大変はばかられるのでございますが、先ほどの損失補償基準ということについても、今まで日本の立木補償でされて、もし茶の木があるとしたら、それに適用されたものには倣えないほど価値のあるものでありますので、この損失補償基準などの評価に関しても、文化財的な価値をしっかり県がサポートして、そして、この移植ということに対して万全の工事ができるように、それが損失補償工事であれるように、やっぱり特段の踏み込んだ御協力をお願いしたいということを要望したいと思います。  それから、この茶園は、やっぱり公益的な使命を帯びたいわゆる公益財産に匹敵するものであると思いますので、人ごと、他人事ではなくて、真剣にやっぱり滋賀県の責任をフルに発揮していただいて、寄り添って、そして成功に導いていただきたい。それから、なくなるかもしれないというこの心配に関して、やはり、日吉にお生まれになりお育ちになった知事だからこそいろいろ話を聞けることもあるかと思いますので、どうかこの価値が守られるように、できるならば存続するように、知事に格段の御尽力をお願いしたいと思います。  あとちょっと5点ほど要望をしてコメントをいただきたいと思いますが、まず、県のサイトの滋賀県なんでも一番〜子どもページ〜に、日本の茶の源流が滋賀県の日吉茶園であることをぜひ掲載してほしい。  永忠が嵯峨天皇に献上した4月22日を日本最古の喫茶、また茶事として記念日登録などをすることに尽力されたい。  知事室の来客用のお茶や、できれば広域連合で日吉茶園の茶を挿し木で増やした日吉銘茶を皆さんに飲んでいただき、来歴をPRしていただきたい。  そして、日吉山王祭の献茶式、4月13日の4基のみこしに献茶する行事などを全国放送になるように尽力いただきたい。  そして、安土城の450年祭や長浜城の450周年の関連イベントなどで、信長や秀吉の茶の湯のこと、また、石田三成の三献の茶の教えなど、ソフトの部分についても滋賀県は豊かですので、大いに役立てられるように御尽力いただきたいということもお願い申し上げまして、再問で御答弁をお願いします。 ◎知事(三日月大造) まず、その土地であったり、その茶樹をお持ちの日吉大社様のそういった所有権なり御意向にしっかりと寄り添いながら対応するということが重要だと思いますし、都市計画道路の事業を予定されている、その事業主体である大津市ともしっかり連携して対応することが重要だと思います。  その際に、今おっしゃった道路拡幅工事と絡みますので、その損失をどのように補償するのか、その損失を補償する際にその公益なり価値というものがどの程度あるのかと。それを確定させるためには調査ですとか解析というものが必要ですが、それは当然、時間を要することでもありますし、さらには、そういったものが一定、確定まで至れば、そのことに伴う補償費用が発生してくると、こういうものを全体でどのように支弁していくのか、負担していくのかという、こういう合意形成を図っていくということから、なかなか、議員がこうしたらどうかということが十分進まないような要因もあるのではないかと拝察しております。  ただ、今、私ども、お茶のPRをする際に、伝教大師最澄が坂本日吉に初めて茶をもたらしたことが日本の茶の発祥ですということを申し上げておりますので、とても文化的な価値のあるそういう場所であり、木であるということから、そういったものが移されなければならないこのときにあっても、しっかりと連携、協力して対応をしてまいりたいと考えております。  また、最後に5つ御提案いただいたことはそれぞれの担当部署にもしっかりと伝えまして、どのようなことができるのか対応を検討してまいりたいと存じます。 ◆25番(海東英和議員) (登壇)それでは、何とぞよろしくお願いいたします。  それでは、第2問目、琵琶湖分水嶺トレイルについて御質問いたします。  滋賀県はビワイチによって、天の時、地の利、人の和を生かす政策展開を経験することができたと思います。そして、この成功体験を励みに、ますます愛される政策として発展していってほしいと念願いたします。  今日は、山の知事に、ある意味、山のビワイチについて提言させていただきます。  山に親しむ人を増やすこと、健全な自然との関わりを育てていくことは、山の健康にも役立ち、自然の中を歩くということは人の健康にも積極的な意味があると考えますが、いかがでしょうか。  さらに、登山やトレッキングの知識や経験は、それらに用いる道具のことも含め、サバイバル力の面、すなわち防災力の面で評価できると考えます。電気やガス、水道が止まっても、テント泊ができ、自炊ができ、慌てずに3日ほど暮らせる力を備えていると、心理的にも大きなゆとりが生まれます。よいことずくめであります。  さらに、山にも、テレビでは映せない、教室では学べない大切な学びがあります。私は、田部井淳子さんと高島トレイルを歩いた際、小学校4年生の山登り体験が人生を貫いたと聞かせていただきました。小学校の頃、駆けっこが苦手で運動会も好きではなかったけれど、安達太良山への山登りで、自分のペースで諦めず登っていきさえすれば、必ず頂上に到達することができるという体験をすることができた。人と比べるのではなく、自分の意思と計画に従って、時間はかかっても山には登ることができるという原体験が、世界初の女性エベレスト登頂者にした原点だったのであります。  また、アメリカでは、アパラチアントレイルやジョンミューアトレイルなど、数千キロメートルに及ぶトレイルを家族で歩くということがホームスクールという形で認められており、学校で授業を受けなくても、家族とトレイルを歩くことが人生の学びとして尊重されるトレイル文化が定着しているということを、日本のロングトレイルの父、加藤則芳さんから学びました。  日本百名山をはじめ、ピークハントという縦移動で山頂を征服するのも山の魅力ですが、トレッキングで横移動を楽しむ視点にも大きな魅力があります。自分の体調を整え、危険を回避して、自然の中を、人生の山あり谷ありを重ねながら目的地を目指すのが魅力なのであります。山には、長い時間軸で思考をし、大いなる力を得る場でありますし、教育にも自殺予防にも役立つと思います。山のビワイチ政策を進める旗振りを私もさせていただきたいと思います。  滋賀県の地理的特性を俯瞰すると、琵琶湖の分水嶺と、滋賀県と京都府、三重県、岐阜県、福井県との県境がほぼほぼ重なるのではないでしょうか。三国峠や三国岳という3つの府県にまたがるポイントが滋賀県には4つあると聞きましたが、琵琶湖の分水嶺をトレイルコースとして俯瞰すると、400キロメートルを超えると思われます。ちなみに、滋賀県の外周や分水嶺が何キロなのかも明らかになっていくことを期待しています。琵琶湖の分水嶺の内側に降った雨の一粒一粒が集まって川となり、琵琶湖に注ぎ、多くの生き物と人の暮らしを支えていることに感謝せずにはいられません。  滋賀県ビジターズビューローの令和5年度の要望にも、観光誘客の面からトレイルは期待されております。日本有数となる琵琶湖分水嶺トレイルの価値と魅力をどのようにお考えか、問います。  さて、日本のロングトレイル界を切り開いてきたのは、東の信越トレイル80キロメートルと西の高島トレイル80キロメートルであると言っても過言ではありません。これは、平成の大合併で高島郡が1つになり、目玉の欲しかった高島市が滋賀県観光振興特区に認定されるために考え出した、堺屋太一審査委員長に求められた伊藤みどりさんの4回転ジャンプに匹敵する企画だったのであります。花の百名山のマキノの赤坂山や、白神山地の方も感心された豊かなブナ林やシャクナゲの群生する今津の近江坂、そして、三十三間堂を建てるのに材を切り出した三十三間山、朽木の三国峠や百里ケ岳など、別々に愛されてきた登山コースをつなげ、中央分水嶺80キロのトレイルコースをつくろうとトライしたのでありました。  合併による機運の高まりも味方し、ボランティアの参加も力に、標柱などを担ぎ上げてコースを整備し、80キロメートルを一気に歩けるようにして、川嶋辰彦日本トレッキング協会の会長を迎え、発会式を催行し、田部井さんやモンベルの辰野さんらの協力も得て、琵琶湖と日本海を眺め、白山を望み、トレッキングを普及してきたのであります。  今、滋賀県には、高島トレイル、比良比叡トレイル、鈴鹿10座や伊吹山を愛する人々、余呉高原のトレッキング、御在所岳の岩登りなどなど、メッカも直近で、頼れる人材がおられます。従来の比良登山や伊吹山登山などの経験も生かしつつ、琵琶湖分水嶺一周トレイルのルートの設定、そして、標識や標柱などのデザインの統一、シンボルロゴの提案など、各種フォーマットを決めて、山のビワイチよろしくロングトレイルの誕生を目指すよいタイミングだと思いますが、いかがですか。  足元の貴重な山野草の保護も大切です。滋賀県は植物の南限と北限が重なるエリアと言われ、希少植物が豊富です。かつて、マキノ高原に山野草を愛する会と称して大型バスで来られたグループの中に、両手にスーパーのレジ袋いっぱい盗掘した春蘭などの山野草を持ち帰ろうとされた方がありました。  また、山の愛好者の中でも意見が分かれるところですが、トレイルランニングによるダメージも心配されており、受入れエリアと自然保護を優先するエリアを明確にすることも課題だと聞きます。滋賀県民が琵琶湖を守ってきた汗と、琵琶湖をレジャーで楽しむ人たちを受け入れてきた寛容さがMLGsに集約されました。  あわせて、北欧の自然享受権などの概念を持ち込んで、滋賀の自然の恩恵を享受する権利を認めると同時に、自然を保護する責任、絶対汚さない責任を負うことを求める、そして、ドネーションの仕組みも取り入れ、琵琶湖から山々に及ぶマナーと哲学を滋賀県から発信していくことはどうでしょうか。  山の人づくり、仕事づくり、レンジャーの育成等についてはどうでしょうか。ニュージーランドの国立公園と野鳥の島、ティリティリマタンギ島をトレッキングした際、ボランティアガイドが、撮っていいのは写真だけ、残していいのは足跡だけと御案内くださいました。そのガイドに加え、レンジャーの方々の格好いいこと、緑と黄色のラインが車にも制服にも使われていて、山の仕事や自然を守る仕事に子供たちが憧れること請け合いなのでありました。  滋賀県にも、山の自然や植物の観察する研究職やガイドする等の仕事を創出していくことが、多様性ある未来に貢献すると思います。朽木生き物の里を担ってくださっていた人材が、滋賀県では仕事がなくなり県外に転出されました。山の観察者、研究者も育てていかなければならないと思います。森林施業をする人だけが山の仕事ではないと思います。例えば、琵琶湖森林づくり県民税がレンジャーの仕事をつくっていくことなどに広がることには夢があると思いますが、いかがでしょうか。  個別の登山ルートと、それをつなぐトレイルルート、そしてアクセスルートの設置、整備は、事故防止や安全対策にも意味があると思います。大きな予算は必要ではありません。現実の安全対策として、滋賀県の山岳遭難の実態はどのような状況でしょうか。県が周知したいことは何でしょうか。今日的な携帯電話等で入山届も出せるようになっていますが、利用状況はどうですか、お尋ねします。  今後の検討課題として、山岳救助は多くの組織や個人に負担がかかります。訓練や専門知識も必要です。組織的かつ計画的に安全対策を強化していくことが何よりも大切と思います。避難小屋の設置の検討も提言します。滋賀県は、1,000メートルクラスの山に囲まれて、そんなに高くないですが、遭難事故も少なくありません。雷や吹雪に遭遇することもあります。関東圏やアルプスの山々のように山小屋の文化も育っていませんが、避難小屋を計画的に設置することも検討材料に加えていただきたいと思います。  最後に、本日取り上げたトレイルコースの設定とトレッキングの振興は、観光誘客もマナーアップも自然保護も遭難対策も併せて取り組んでいける、ある意味、山のビワイチです。県政150周年を迎えたこの機会に、トレイル研究会などを立ち上げ、御検討されるよう提言し、御所見をお伺いします。  滋賀県がお預かりしている山々の懐に入り、親しんでいく水源トレイル文化を育てる先頭に、私たちの山の知事に立っていただきたいとエールを送り、再問を留保し、質問を終わります。 ◎知事(三日月大造) 琵琶湖分水嶺トレイルについて、7点御質問いただきました。  まず1点目、山の健康、人の健康との関係についてでございますが、多くの人が山に親しみ、関わることは、山の健康で目指している、農山村と都市の人、経済の循環の促進にもつながると考えております。また、山を歩き、自然と触れ合い、景色を楽しむことで、気持ちがリフレッシュし、体を動かすことによる身体の健康とともに、心の健康にもつながるものと考えます。  2点目の琵琶湖分水嶺トレイルの価値と魅力についてでございますが、滋賀の山々は眼下に広がる琵琶湖の眺望がすばらしく、史跡指定されている歴史的資産も多く所在するなど、国内外に広くアピールできる観光資源であります。こうした琵琶湖を取り囲む山々の自然道を巡るトレイルは、滋賀の豊かな自然を体験、体感できるとともに、訪れた人々の心と体の癒やしにもつながる大変魅力的な観光コンテンツとなり得るものと考えております。  3点目の琵琶湖分水嶺一周トレイルの実現を目指すタイミングについてでございますが、コロナ禍を経て、人々の自然志向や健康志向が高まる中、アウトドアアクティビティーの一つとして、トレイルには、老若男女を問わず、これまで以上に注目が集まっております。また、県内を見ても、高島トレイルをはじめ、比良比叡トレイル、鈴鹿10座などに県外から多くの方々がトレイルに訪れていらっしゃいます。こうしたタイミングで御提案いただいた琵琶湖分水嶺一周トレイルにつきましては、大変魅力的であります一方、登山者の安全確保や地元の方々との調整など、課題もあると認識をしております。  4点目のマナーと哲学の発信についてでございますが、本県は、琵琶湖や鈴鹿山脈、伊吹山地、比良山地、比叡山地等の山々などの豊かな自然を有しております。こうした自然の恩恵を享受することにつきましては、ふるさと滋賀の野生動植物との共生に関する条例において、自然環境に関する情報提供等を通じ、自然との触れ合いの促進を図ることとしております。  自然を保全する責務を負うことにつきましても、同条例により指定希少野生動植物種を指定し、捕獲、採取を禁止しているところです。また、登山客に対しては、昨年度、滋賀県山岳連盟等の御協力の下、作成した「滋賀の山マップ&チェックブック」を配布し、山登りのルールとマナーの啓発に努めております。  こうした自然の保全と活用に当たりましては、議員御提案のドネーション、いわゆる寄附につきましても、課題、また可能性の一つとして認識をしております。  引き続き、自然との共生に向けて、豊かな自然がもたらす様々な恵みに対する畏敬の念と感謝の気持ちを持って、マナーの啓発や自然との触れ合いの促進等を図ってまいりたいと存じます。  5点目のレンジャーの仕事についてです。山の自然や植物の観察をガイドするなどの、いわゆるレンジャーの仕事づくりを県として行うことは考えておりませんが、自然の魅力やマナーを訪れる人にきちんと伝えるためには有益であり、農山村における生業、なりわいの一つとして可能性があると考えます。県内では、例えば伊吹山を守る自然再生協議会において、山頂の防護柵の維持管理や、利用者へ山の自然や植物について案内などを行うレンジャーの設置について検討されており、県としても必要な助言を行っているところです。  議員御提案の、琵琶湖森林づくり県民税をレンジャーの設置に要する経費に充てることについては、本税の使途が環境重視と県民協働の森林づくりに限定されておりますことから、なじまないのではないかと考えます。  6点目、山岳遭難の状況等についてでございますが、本県の山々は比較的低く登りやすいことから、初心者の方も多く登山に訪れておられ、令和3年には84件の山岳遭難が発生、97名の方が遭難されました。無理なく安全に登山していただくためには、登山のルールやマナーをしっかりと周知していくことが重要でありますことから、先ほど申し上げた啓発冊子を作成し、配布しているところでございます。  また、万が一の場合に備えて入山届の提出を呼びかけてきており、議員御質問のインターネットによる入山届については令和3年に1,855件の提出があったところでございます。  今後も引き続き安全に登山いただけるよう、登山のルールやマナー、入山届の提出の普及啓発に努めてまいりたいと存じます。  7点目のトレイル研究会の立ち上げについてです。先ほども申し上げたとおり、琵琶湖分水嶺トレイルの実現には、登山者の安全確保や地元との調整など解決すべき課題があります。一方、人々のアウトドアへの関心が高まる中、この琵琶湖分水嶺トレイルにつきましては、豊かな自然を有する本県にとって、大変魅力的な観光コンテンツになる可能性を秘めているものと認識しております。  こうした認識の下、まずは実現の可能性について、地元自治体をはじめ、関係する皆様方から丁寧に御意見を伺うことから始めてまいりたいと存じます。 ◆25番(海東英和議員) (登壇)前向きなのか後ろ向きなのかちょっと分からんような、内容も心配しつつ聞いていたら、最後は研究会をやっていくというお答えだったと拝聴しました。今、滋賀県内で、特に県庁のOBの方で熱心に取り組んでおられるキーパーソンがたくさんいらっしゃいますし、ぜひ150年を記念して、そしてこれからの150年を展望して、ぜひこういう人と自然がよき関係を結ぶことなどにぜひ生かしていただくように、夢を持って取り組んでいただくように、知事からの励ましをお願いしたいと思います。  それから、今年か去年か、お正月に京都トレイルという番組をNHKが全国放送、再放送もしたんですが、それでは、比叡山の山王院や浄土院や釈迦堂という比叡山の魂のような部分が皆、京都という形で紹介されて、現実に、滋賀県域に京都トレイルの標柱が立っていたり、本が出ていたり。だから、やっぱり滋賀県も、自分たちの資源を多くの人に愛していただいて、そして喜んでいただいて、広がっていくように、この分野について、どうか熱心に楽しく取り組んでいただきたいというふうに要望します。  知事、コメントがありましたらもう一度お願いします。 ◎知事(三日月大造) 私も熱心に楽しく夢を持って取り組みたいと思いますが、まだ、すいません、十分その分野に私も造詣があるものではありませんので、まずは頑張ってらっしゃる方々を応援するところから始めてみたいなというふうに思います。  山の準備はしたことあるんですけど、台風や雨で全てその機会が流れておりまして、なかなか山に入り、登る機会がなくて、その魅力を十分に堪能することができないんですけれども、皆さんのお声も聴きながら、どういうことができるか考えていきたいと存じます。 ◆25番(海東英和議員) 終わります。(拍手) ○議長(岩佐弘明) 以上で、25番海東英和議員の質問を終了いたします。  最後に、29番有村國俊議員の発言を許します。 ◆29番(有村國俊議員) (登壇、拍手)最後、よろしくお願いします。北朝鮮による弾道ミサイル発射への対応について質問をいたします。  北朝鮮は、10年以上にわたって人工衛星と称して弾道ミサイルの発射を繰り返しており、弾道ミサイルが日本上空を通過するなどいたしました。国内ではこれまでに6回、Jアラート──全国瞬時警報システムにより国民にミサイル発射情報が伝達されました。今年10月4日には、北朝鮮から発射された弾道ミサイル1発が青森県上空を飛翔し、太平洋上に落下しました。また、11月18日には、新型と見られるICBM──大陸間弾道ミサイルが、北海道渡島西方約200キロメートルの我が国の排他的経済水域内に落下しており、多くの国民に不安感や緊張感を与えたところであります。
     このような行為は、我が国と地域および国際社会の平和と安全を脅かす一方的かつ重大な挑発行為であり、一連の国連安保決議に明確に違反するものであり、断じて容認できるものではありません。政府による外交努力等によってこの問題が平和的に解決されることを願いますが、一方で、不測の事態に備えた施策を進めておくことも必要であります。  仮に弾道ミサイルが本県に着弾した場合、いわゆる国民保護法や滋賀県国民保護計画に基づいて対応することになりますが、国民保護計画には、県の責務として、県は、武力攻撃事態等において、国民の協力を得つつ、ほかの機関と連携、協力して、自ら国民の保護のための措置を的確かつ迅速に実施し、県域において関係機関が実施する国民保護措置を総合的に推進すると明記されており、県が責任を持って県民を保護するための施策を行っていく必要があります。  知事には、先日の我が会派の代表質問で、武力攻撃事態等への対処について、県民の命と暮らしを守ることは県の最も重要な使命である、県民の生命、身体、および財産を保護するために最善を尽くす等、県民の命を守ることへの決意を述べられました。いま一度、このように繰り返される北朝鮮による弾道ミサイル発射について、知事の所見を伺います。  次に、具体的な国民保護施策について、3点、知事公室長に伺います。  弾道ミサイルが発射された場合、着弾までに極めて短時間、先般は6分しかありませんでした。その中で、県民を守る上で必要な情報を集め、関係機関と素早く共有し、対応することが求められていますが、弾道ミサイル関連の情報収集をどのように行っているか、また、収集した情報を基に、実際、どのような対応を取っているか、伺います。  次に、武力攻撃事態等が生じた場合、まずは人命救助を最優先にした行動が求められているところであり、公的機関においては、一人でも多くの命を守るために迅速で的確な対応が必要不可欠であります。そのためには、平時から訓練などで対応能力を高めていく必要があると考えますので、日頃どのような取組を行っているか、伺います。  今後、万一、本県の上空を弾道ミサイルが飛翔すれば、Jアラートにより即時に県民に情報が伝達されることから、Jアラートは国民保護の根幹を担う非常に重要なシステムであります。一方、先般、Jアラートが使用された際には、機器の不具合で情報を住民に周知できなかった、対象地域が誤配信されたトラブルがあったと報道されています。加えて、Jアラートによりミサイル情報が伝達された際の住民の避難行動が低調であったとの指摘があり、万が一のときに県民の方々が身を守る行動ができるのか非常に危惧しており、しっかりと対処方法について周知を図っていただければと願うものであります。  最後に、Jアラートの点検状況と、Jアラートによるミサイル情報が伝達された際の県民の取るべき行動についてどのように周知しているか、伺います。 ○議長(岩佐弘明) 29番有村國俊議員の質問に対する当局の答弁を求めます。 ◎知事(三日月大造) (登壇)北朝鮮による弾道ミサイル発射への対応について、4点の中で最初にいただいた私への質問にお答えいたします。  北朝鮮による度重なる弾道ミサイルの発射は、国際社会の平和と安定を損なう行為であり、我が国においても地域においても極めて深刻かつ重大な脅威であり、断じて容認できるものではございません。こうした暴挙が繰り返されることで、県民の皆さんに多大な不安を与えており、強い憤りを感じるとともに、県民の生命、身体、および財産を守らなければならない知事として、緊張感を持って万が一の事態に備えなければならないと決意を新たにしているところでございます。  国におきましては、国際社会と協調し、外交を含むあらゆる対策を講じて、我が国の安全・安心に影響を与える事態を回避するとともに、住民や地方自治体への情報伝達体制をはじめ、国民保護体制の強化が図られることを強く求めるものでございます。  県といたしましても、新たに弾道ミサイルによる攻撃を想定し、住民避難などの対応能力の向上に向けた訓練の実施や、県民の皆さんに対する対処方法の周知啓発などに努め、万が一の事態から県民の安全を守り、県民の生活や経済への影響を最小限にするため、国、市町、関係機関と連携を密にし、対応に万全を期してまいりたいと存じます。 ◎知事公室長(中嶋毅) (登壇)北朝鮮による弾道ミサイル発射への対応について、私にいただきました3点の質問にお答えをいたします。  まず1点目の弾道ミサイル情報の収集方法とその対応についてでございますが、弾道ミサイルの発射情報は、その都度、国からメール等により情報提供を受けており、市町、消防、警察、自衛隊等の関係機関と共有を図っております。万一、本県に危害が及ぶ恐れがある弾道ミサイルが発射されれば、国から全国瞬時警報システム──Jアラートを介して県民の皆さんに、携帯電話に配信される緊急速報メールや市町の防災行政無線等を通じて瞬時に情報が伝達されますとともに、県、市町などの関係機関にも同時に提供されることとなっております。また、Jアラートに併せて、緊急情報ネットワークシステム──エムネットを通じまして、発射時刻や方向などの情報についても提供を受けております。  こういった情報を受け、県におきましては、ミサイルの通過や落下の状況に応じ、国の指示の下、知事を本部長とする国民保護対策本部等を立ち上げ、住民の避難や救援などの対応を取ることとしているところでございます。  次に、2点目の平時からの取組についてでございますが、万一の事態に迅速かつ的確な対応を行うためには、弾道ミサイルやテロ事案を想定した訓練や研修を繰り返し行い、対応能力を高めておくことが重要であると認識しております。  これまで本県におきましては、国や県内市町と共同で、列車の爆破テロを想定した実動訓練をはじめ、計10回の国民保護の訓練を実施してきたところでございます。度重なるミサイルの発射を受け、来年2月には、弾道ミサイルによる攻撃を想定した図上訓練を、市町、消防、警察、自衛隊と共同で実施することとしております。  また、住民の皆さんの円滑な避難誘導のため、中心的な役割を担う市町職員を対象に、避難場所や避難方法等の計画を作成するための研修を国と共に実施してきているところでございます。引き続き、国、市町、その他関係機関等との連携を強化し、より一層緊張感を持って訓練等を積み重ねることによりまして、対応能力の向上に努め、万一の緊急の事態に備えてまいりたいと存じます。  最後に、Jアラートの点検状況と避難行動の周知方法についてでございますが、Jアラートについては定期的に点検し動作確認を行っており、本年は1月から先月11月までの間に計5回行い、異常がないことを確認しております。  また、避難行動の周知方法についてでございますが、万一、Jアラートによりミサイル情報が伝達された際には、県民の皆さんに、屋外におられる場合は、近くの建物の中か地下に避難していただく、近くに建物がない場合には物陰に身を隠すか地面に伏せて頭部を守っていただく、屋内にいる場合は窓から離れるか窓のない部屋に移動していただくといった避難行動を取っていただくことになります。  このような対処方法を、県や市町のホームページなどを通じて周知を図っているところでございますけれども、今後さらに、出前講座や防災教育の場など、様々な機会を捉えて周知啓発を行ってまいります。 ◆29番(有村國俊議員) (登壇)我々日本人は、北朝鮮による相次ぐミサイルの発射に慣れてしまった感があるなというふうに、私、危惧しております。  危機感という意味では、世界各国ありますけども、日本海を挟んだお隣の国から頻繁にミサイルが、また、この滋賀の上空、あるいは琵琶湖に来る可能性もなきにしもあらずということでありまして、今、知事と公室長がお答えいただきましたように、周知徹底しっかりやってらっしゃるし、これからもその危惧は、可能性はあるということでもありますので、年末年始も何があるか分からないですし、ぜひ広報のほうをしっかりと引き続きやっていただきたいというふうに期待をしております。  以上でこの案件につきましては終わりとさせていただきまして、次に移らせていただきたいと思います。  次に、いじめ、暴力、不登校の対応についてであります。  10月下旬に、文部科学省ならびに滋賀県教育委員会は、児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査の結果を発表いたしました。多くの方が新聞等の報道に関心を寄せられたと思います。  概要については御存じかと思いますが、滋賀県の公立学校の状況について簡単に紹介いたしますと、暴力行為の発生件数が981件で過去最多となり、とりわけ小学校が569件と過去最多でありました。いじめの認知件数は全ての校種で増加して、総認知件数は9,823件で、これも過去最多でありました。不登校につきましても全ての校種で増加して、小学校で1,066人、中学校で1,835人となり、過去最高となりました。  教育委員会の分析を見ますと、暴力行為やいじめを見逃さずに、早期発見、早期対応されている学校の取組もあります。今後もこれらの問題が増え続けることを考えますと、このままでいいのか、これでいいのかと危惧しております。  また、不登校については、義務教育の段階における普通教室に相当する教育の機会の確保等に関する法律、いわゆる教育機会確保法が制定され、不登校は問題行動ではないことや、休養の必要性、学校復帰が目標ではなく社会的自立が目標である等の趣旨は理解しますが、これだけ多くの児童生徒が学校へ行けていない現状には大変憂慮しております。  そこで今回は、いじめ、暴力、不登校の対応について、全て知事に伺います。  まず、児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題調査の結果について、どのような見識をお持ちか、伺います。  国は平成25年にいじめ防止対策推進法を制定し、本県では平成26年3月に滋賀県いじめ防止基本方針を制定し、平成29年9月に改定、学校や教職員への資質向上および取組の推進に努めてこられました。  ただ、いじめをはじめ、様々なデータを見てみますと、近年、全てが増加傾向であり、学校現場は非常に厳しい状況だと感じています。言わずもがな、学校の先生方も頑張っておられます。しかし、教職員の力だけでは何ともならない現状もあると考えます。例えば学校の働き方改革が思うように進んでいない、子供と向き合う時間が十分確保できていないとか、スクールカウンセラースクールソーシャルワーカーが配置されているが、その時間数が十分でないなど、学校現場や保護者からこのような心配を伺うことがあります。  そこで、いじめや不登校等の課題に対して、有効な対策についてのお考えを伺います。  さて、県内では11年前に、いじめを苦に自ら命を絶った中学生がおられました。そのことにより、いじめ防止対策推進法が制定され、本県は全国に先駆けて取組を行ってきたように、今後もその責任と義務があると感じています。  知事はこれまで先頭に立って、教育委員会との連携を指示され、取組を進めてこられましたわけですが、これまでの滋賀県いじめ問題対策連絡協議会や総合教育会議を振り返って、課題や今後の方向性について伺います。  さて、私はこれまでから、いじめ問題等への対応を重く受け止めて、常任委員会や特別委員会で申入れをしてまいりました。それは、いじめ、暴力行為、不登校の解決に向けて、全ての学校の学級ごとに対策委員長を設けるという内容の提案であります。つまり、いじめ対策委員長、暴力対策委員長、不登校対策委員長をクラスメートから選任して、学級が一丸となって協力して、強い意志で解決に乗り出す体制を構築するものであります。子供たちの力を引き出し、子供たち自らが自分たちの課題を自分たちで解決できるようなシステムをクラス全員で目指すというものであります。  願わくば、滋賀方式として滋賀から発信して全国に波及すればありがたいですし、何よりも児童生徒が安心して明るく過ごすことができる校内環境を整えられるよう進めていければと願います。  このような児童生徒の自発的、自治的な活動の有効性とその推進について、お考えを伺います。  知事は、「子ども、子ども、子ども」のキャッチフレーズの下、子供を真ん中に置いた、また、子供の意見を大切にした滋賀県政を進めたいとされています。福永教育長も同様ですね。限られた予算の中でも、子供や学校に十分、予算や人材をかけて、子供たちの将来の滋賀や日本をよりよくするために今後も尽力してほしいと願います。  最後に、不登校をはじめ、困難な環境にある子供や、いじめ等で苦しむ子供たちを減らすための方策について伺います。 ◎知事(三日月大造) いじめ、暴力、不登校の対応について、私に5点、御質問いただきました。  まず1点目、諸課題調査の結果、それに対する所見ということでございますが、まず、いじめについては、人権の問題であり、命の問題であり、社会全体の問題です。そういう基本認識を持って対応していくということが重要です。  いじめにつきましては、令和3年度は過去最多となりました。これは、各学校で子供たちの小さなトラブルを見逃さず対応し、いじめとして認知し、報告された結果であると捉えております。知事としていじめの重大事態の報告も受けており、いじめで苦しんでいる子供のことを思いますと、いじめ防止対策を一層進めていく必要があると考えております。  暴力行為につきましては、近年、小学校の発生件数の増加について憂慮しているところでございます。暴力行為には様々な要因があり、先生方にはその背景をしっかりアセスメントしていただき、学校として組織的な対応を進めることが重要であると考えております。  不登校につきましては、小学校と高等学校での在籍率が全国と比較して高い状況にあります。子供たちが学習の機会や社会性を身につける場を失うことは深刻な課題でありまして、県として取組にさらなる工夫が必要だと考えております。また、コロナ禍で欠席が増えている子供や、児童虐待、ヤングケアラーで苦しんでいる子供もおり、このような子供たちのために、教育と福祉の連携強化がより重要だと考えているところでございます。  2点目、有効な対策についてでございますが、いじめや不登校に対する直接的な対応も必要でありますが、子供たちが安心して、また、楽しく学ぶための取組を講ずることが有効であると認識しております。  このために、まずは子供自身の自己肯定感を高めるために、分かった、できたと感じられるような授業づくりを進めていくことが大事だと思います。この協議の際にも言ってたんですけれども、分かった、できただけではなくて、「先生、分からない」と言える教室づくりでありますとか、「助けて」と言える社会や空間づくりというものも大事じゃないかということを話し合っているところでございます。  子供自身の自己有用感を高めるために、全ての子供たちに居場所と出番を用意し、自分のよさを発揮し、お互いに認め合えるような学級づくりを進めていくことも大切です。しかしながら、学校には様々な理由で悩む子供もおりますことから、教員が子供たちの思いに寄り添った対応をするとともに、スクールカウンセラースクールソーシャルワーカーの配置についてもいろんな御意見、御提言いただいておりますので、そういったものにできるだけ添える形で取組をつくっていく必要があると考えているところでございます。  3点目、今後の課題や方向性についてでございますが、いじめ問題対策連絡協議会や総合教育会議では、いじめだけでなく、いじめと不登校等の関係の分析も大切だという御指摘や、子供の権利を尊重する立場からの議論が必要だ等の御指摘もいただいており、こうしたことが課題であると認識しております。  こうした課題を解決するために、いじめと暴力や不登校を相互に関連づけて対策を考えることや、これまで以上に子供の意見に耳を傾け、子供の生活や、いじめや不登校等の背景について議論を深め、子供を真ん中に置いた取組を進めていきたいと存じます。  4点目、自発的、自治的な活動についてでございますが、子供たちの自発的、自治的な活動である特別活動において、子供自らが企画し、創意工夫を発揮することは、学校や学級の生活を豊かなものにすることにつながると考えます。いじめや暴力、不登校に向かう子供たちの取組においても、子供たち自らが主体的に考え、取り組めるように進めていくことが大切だと存じます。  5点目、困難な環境にある子供たちを少しでも減らすための方策についてでございますが、今、子供たちの周りには、学校だけでは解決できない様々な課題があり、これまで以上に教育と福祉の連携を強化し、切れ目のない支援が進むよう、社会全体で重層的な体制を構築していく必要があると存じます。  子供のために、子供とともに、子供に目線を合わせて、対話をしながらとの考えを大切にし、県政に取り組んでおりますが、今後さらに子供を真ん中に置いた取組を推進し、誰一人取り残さず、子供たちが輝く滋賀をつくっていく所存であります。同時に、子供たちは大人を見てますので、私たち大人がどのような顔をして日々過ごしているのかというのが大変重要だということを肝に銘じながら、答弁を締めくくりたいと存じます。 ◆29番(有村國俊議員) (登壇)そうですね、ありがとうございます。  これから将来なんですけども、いじめとか暴力とか不登校の現状がより深刻になるわけなんですけども、これから将来も、昔から、今、あるいは未来、この3件、いじめ、暴力、不登校、学校でこんなことがより深刻になっていく世の中になるのか、それとも減っていくのか、ちょっと私も読めないわけなんですけども、知事おっしゃるように、スクールカウンセラーとかスクールソーシャルワーカーの方々の予算も、来年度、再来年度、やっぱり増やしていかないとどうにもならないのかなとか思いながらも、しかし人件費のほうの予算も必要になってくるわけで、これから湯水のごとくスクールカウンセラーとかスクールソーシャルワーカーの方々の手当てはやらなきゃいけないんだけれども、やっていっていいと思うんだけども、しかし、これ、ずっと右肩上がりでこの3件の案件が増えていくとすれば大変なことになってしまうと。  そんな中で、自主的、自発的にクラスの中で解決する、そういった子供たちが主体で、学校の主人公で、彼らが彼らの中によって彼らで解決できる、その能力のポテンシャルを滋賀県の子供たちは持っているというふうに思ってるんで、その辺の辺りをしっかり、私は福永教育長に今日は質問できない立場でありますけども、市町の教育委員会、あるいはいろんな教育界の方々と連携して、知事、お力添えをいただきながら、自主的、自立的に子供たちがしっかりと学校で、どうやったらいいのかなと各クラスで協議ができるような、そんな醸成していただけるような、そんな思いが大変強く思って、今回、質問しております。  最後に、その自主、自立、自治、そういったところについて、学校で、クラスでどういうふうにあるべきかなということで、知事のお考えがあればぜひお聞かせいただきたいというふうに思います。1点、よろしくお願いします。 ◎知事(三日月大造) 子供たち自身が、例えば教室の場において、子供たちとの関係、部活動等において、自立的に自主的に、また自治的に、こういったいじめ不登校、暴力の問題を、それはいけないことだ、やめよう、こういう関係をつくろうとすることは大変重要だと思います。既にそれぞれの学校や場面において、先生方や周りの方々がそういったことで取組をされていると承知をしておりますが、そのことだけに委ね過ぎてしまうと、その間に立つ子供たちがかえって負担に思うというようなこともありますので、そこは慎重な見極めも教育的な配慮から必要なのではないかなというふうに思っております。  私、このいじめ、不登校、暴力の問題、対策協議会なんかにも出ておりまして感じますのは、こういった問題を議論することが、実は大人の社会の県庁での仕事の在り方の様々な場面に、有用な情報や対策にもつながるのではないかと考えることがあります。したがって、子供の中で起きるこういった課題や問題を、子供の中のことにするのではなくて、社会全体で受け止めて、社会全体のありようを変えていく一つの力にしていくことも、当事者の悩みを解決することと併せて大事なことだと思いますので、こういった視点に立ってさらなる対策をつくっていきたいと存じます。 ◆29番(有村國俊議員) 終わります。(拍手) ○議長(岩佐弘明) 以上で、29番有村國俊議員の質問を終了いたします。  以上で発言通告のありました発言は終わりました。  この際、関連質問はありませんか。    (「なし」)  関連質問なしと認めます。  以上で質疑ならびに一般質問を終わります。    ──────────────── △議第145号から議第170号まで(令和4年度滋賀県一般会計補正予算(第5号)ほか25件)ならびに請願(各常任委員会付託) ○議長(岩佐弘明) 議第145号から議第170号までの各議案ならびに請願は、お手元に配付いたしておきました文書のとおり、所管の常任委員会に付託いたします。           ──────────────────────────────                  令和4年11月定例会議議案付託表                                        令和4年12月12日(月) 〇総務・企画・公室常任委員会  議第145号 令和4年度滋賀県一般会計補正予算(第5号)   第1条 歳入歳出予算の補正のうち    歳入の部 全  部    歳出の部 款1 議会費         款2 総合企画費         款3 総務費   第2条 債務負担行為の補正のうち    1 追加 408 「令和の時代の滋賀の高専」設置事業(造成実施設計業務)         409 「令和の時代の滋賀の高専」設置事業費補助(PFIアドバイザー業務)    2 変更 8 選挙公報作成配送業務   第3条 地方債の補正  議第147号 令和4年度滋賀県用品調達事業特別会計補正予算(第2号)  議第148号 令和4年度滋賀県モーターボート競走事業会計補正予算(第2号)  議第153号 滋賀県特別職の職員の給与等に関する条例の一部を改正する条例案  議第154号 滋賀県職員等の給与等に関する条例等の一部を改正する条例案  議第155号 滋賀県使用料および手数料条例の一部を改正する条例案  議第156号 滋賀県行政財産使用料条例の一部を改正する条例案  議第163号 財産の処分につき議決を求めることについて  議第165号 指定管理者の指定につき議決を求めることについて(滋賀県立県民交流センター)  議第170号 令和5年度において発売する当せん金付証票の発売総額につき議決を求めることについて 〇土木交通・警察・企業常任委員会  議第145号 令和4年度滋賀県一般会計補正予算(第5号)   第1条 歳入歳出予算の補正のうち    歳出の部 款9 土木交通費         款10 警察費
            款12 災害復旧費のうち         項3 土木交通施設災害復旧費  議第151号 令和4年度滋賀県工業用水道事業会計補正予算(第2号)  議第152号 令和4年度滋賀県水道用水供給事業会計補正予算(第2号)  議第157号 滋賀県工業用水道条例の一部を改正する条例案  議第160号 契約の締結につき議決を求めることについて(びわこモーターボート競走場旧スタンド他解体その他工事)  議第161号 契約の変更につき議決を求めることについて(大津能登川長浜線補助道路整備工事)  議第162号 契約の変更につき議決を求めることについて(大津能登川長浜線補助道路整備工事)  議第164号 財産の処分につき議決を求めることについて  議第169号 滋賀県道路公社が行う有料道路事業の変更に同意することにつき議決を求めることについて 〇環境・農水常任委員会  議第145号 令和4年度滋賀県一般会計補正予算(第5号)   第1条 歳入歳出予算の補正のうち    歳出の部 款5 琵琶湖環境費         款8 農政水産業費         款12 災害復旧費のうち          項2 農政水産施設災害復旧費   第2条 債務負担行為の補正のうち    2 変更 37 県営農道整備事業  議第149号 令和4年度滋賀県琵琶湖流域下水道事業会計補正予算(第3号) 〇厚生・産業常任委員会  議第145号 令和4年度滋賀県一般会計補正予算(第5号)   第1条 歳入歳出予算の補正のうち    歳出の部 款6 健康医療福祉費         款7 商工観光労働費   第2条 債務負担行為の補正のうち    1 追加 411 滋賀県立長寿社会福祉センター(福祉用具に関する業務に限る。)管理運営委託  議第146号 令和4年度滋賀県国民健康保険事業特別会計補正予算(第1号)  議第150号 令和4年度滋賀県病院事業会計補正予算(第1号)  議第167号 指定管理者の指定につき議決を求めることについて(滋賀県立長寿社会福祉センター(福祉用具に関する業務に限る。))  議第168号 指定管理者の指定につき議決を求めることについて(滋賀県立テクノファクトリー) 〇教育・文化スポーツ常任委員会  議第145号 令和4年度滋賀県一般会計補正予算(第5号)   第1条 歳入歳出予算の補正のうち    歳出の部 款4 文化スポーツ費         款11 教育費   第2条 債務負担行為の補正のうち    1 追加 410 滋賀県営都市公園(彦根総合スポーツ公園に限る。)管理運営委託    2 変更 335 滋賀アリーナ整備事業(PFIによる設計・建設・管理運営業務)  議第158号 滋賀県公立学校職員の給与等に関する条例の一部を改正する条例案  議第159号 契約の締結につき議決を求めることについて(国宝延暦寺根本中堂および重要文化財延暦寺根本中堂廻廊保存修理工事)  議第166号 指定管理者の指定につき議決を求めることについて(滋賀県営都市公園(彦根総合スポーツ公園に限る。))           ──────────────────────────────                   請  願  文  書  表 △請願第8号 「軍事費のGDP比2%」の大軍拡に反対し、日本国憲法第9条を生かした平和的外交を日本政府に求める意見書を提出することについて 請 願 番 号 第8号 受 理 年 月 日 令和4年12月5日 件     名 「軍事費のGDP比2%」の大軍拡に反対し、日本国憲法第9条を生かした平和的外交を日本政府に求める意見書を提出することについて 請願者住所氏名 (略) 紹 介 議 員 黄野瀬明子 節木三千代 付 託 委 員 会 総務・企画・公室常任委員会 審 査 結 果 請 願 要 旨 【請願趣旨】  岸田首相は日本のこれからの平和と安全保障に関わる方策を検討するためとして、「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」(座長 佐々江賢一郎・元外務次官)を設置し(9月)、その報告書を11月に公表した。この委員会には憲法学者は含まれておらず、非軍事的対応を含む多角的な検討が必要なテーマであるにもかかわらず、「敵基地攻撃能力の保有」「防衛力の抜本的強化」など軍事一辺倒の結論に終始したことに失望を禁じ得ない。報告書は近年における「安全保障環境の急激な変化」「核・ミサイルの脅威」を声高に喧伝しているが、日米が合同で、東アジア全域において日米合同演習を繰り返していること、日本が軍事費を増大させ、10年連続で史上最高の水準を更新してきたこと、F35戦闘機など攻撃的兵器の「爆買い」、またGDP比2%により世界第3位の軍事大国になること等には一切触れていない。こうした偏った「敵国の脅威」分析は「安全」を叫びながら軍拡競争を招来させ、戦争の危険を煽っているようにしか見えない。  岸田首相は11月28日夜、鈴木俊一財務大臣と浜田靖一防衛大臣を官邸に呼び、防衛に関する予算を2027年度にGDP(国内総生産)比の2%にするよう指示した。軍事費をGDP比2%にするためには11兆円が必要となり、その財源として赤字国債か増税が検討されている。これらは、現在もしくは将来の国民に際限のない負担を押し付けるものである。  また、東アジアの「脅威」とされる事実もアメリカからの情報であり、情勢判断である。現在の中国と日本との良好な貿易関係を見れば、中国が今すぐ日本を武力侵略し、あえて自国の安全を危険にさらす合理的な理由はない。中国の台湾問題は人道上問題があるかもしれないが、中国の内政問題であり、日本が首を突っ込む必要はない。それどころか、万が一、米国が台湾有事に軍事介入すれば、日本も平和安全法制に基づいて参戦することになり、中国から反撃される対象となり得る。このような事態を断じて招いてはならない。  政治の役割は、戦争を起こさないために外交努力を尽くすことである。例えば、東南アジア諸国連合(ASEAN)は、1967年の設立以来、国家間で東アジア友好協力条約(TAC)を締結し、紛争の外交的解決を堅持してきた。また、今後、ASEAN10か国と日本・米国・中国・ロシアなど8か国が参加する東アジア・サミットを強化し、東アジア規模の友好条約を締結する構想であるASEANインド太平洋構想(AOIP)を採択している。こうした構想を実現させることこそ、「紛争」を「戦争」に転化させない人類の英知であり、国連憲章や憲法第9条が示す平和への道である。  よって、国会および政府におかれては、アジア全域に軍事的緊張をもたらす軍事費のGDP比2%への増額を行わず、ASEANや核兵器禁止条約の締結に至る各国の努力に学び、日本国憲法第9条の精神を名実ともに発揮した平和的外交の実現に踏み出すことを強く求めるものである。 【請願項目】  「軍事費のGDP比2%」の大軍拡に反対し、日本国憲法第9条を生かした平和的外交を日本政府に求める意見書を提出すること           ──────────────────────────────                   請  願  文  書  表 △請願第9号 「消費税5%への減税実施を求める」との意見書の提出を求めることについて 請 願 番 号 第9号 受 理 年 月 日 令和4年12月5日 件     名 「消費税5%への減税実施を求める」との意見書の提出を求めることについて 請願者住所氏名 (略) 紹 介 議 員 黄野瀬明子 節木三千代 付 託 委 員 会 総務・企画・公室常任委員会 審 査 結 果 請 願 要 旨 【請願趣旨】  新型コロナウイルスの感染拡大と物価高騰が日本経済に重大な打撃を与えており、国民、中小事業者の暮らしと営業を支える緊急対策が求められている。世界の99の国と地域では、日本の消費税に当たる付加価値税の減税を行っている。急激な物価高騰の負担軽減に取り組み、光熱費や食品など、多くの国民生活に関わる品目を減税している。スペインは、電気代の税率を半分以下に引き下げた。イタリアは、天然ガスに対する税率を10%から5%に引き下げた。コンゴ民主共和国は、燃料油の付加価値税を免税にしている。ポーランドは、天然ガスや肉、魚、野菜、乳製品の税率をゼロ%にした。ペルーは、砂糖、パン、鶏肉、卵、パスタをゼロ税率にしている。プエルトルコは、台風被害対策として付加価値税を減税した。世界では消費税を機動的に引き下げている。日本も消費税減税に踏み出すべきである。  消費税は社会保障財源のために必要という声もあるが、急激な物価高騰で今の生活が成り立たないのに将来のためなどというのは本末転倒である。財源は、コロナ禍でも史上空前の大儲けを上げ、莫大な内部留保や金融資産を保有する大企業や富裕層に応分の負担を求めることで確保できる。生活費には課税せず、能力に応じて負担する税制に切り替えるべきである。消費税減税は全ての国民に平等に恩恵が届く。 以上の立場より請願する。 【請願事項】  「消費税率を5%に減税することを求める」との意見書を国に上げること           ──────────────────────────────                   請  願  文  書  表 △請願第10号 「インボイス制度の実施中止を求める」との意見書の提出を求めることについて 請 願 番 号 第10号 受 理 年 月 日 令和4年12月5日 件     名 「インボイス制度の実施中止を求める」との意見書の提出を求めることについて 請願者住所氏名 (略) 紹 介 議 員 黄野瀬明子 節木三千代 付 託 委 員 会 総務・企画・公室常任委員会 審 査 結 果 請 願 要 旨 【請願趣旨】  新型コロナ禍と物価高騰の影響により中小事業者の経営困難が続く下で、2023年10月からインボイス制度(適格請求書等保存方式)が実施されようとしている。免税事業者を取引から排除しかねないインボイス制度は、事業者間の取引慣行を壊し、免税点制度を実質的に廃止するものである。仕入れや経費に含まれる消費税を価格や単価に転嫁できなければ、ベンチャーもフリーランスも育たない。インボイス発行事業者として登録した個人情報が、国税庁のサイトを通じて一括ダウンロードでき、商用利用されることへの懸念も広がっている。中小企業団体をはじめ、税理士団体、文化芸術団体、シルバー人材センターなど多くの団体やフリーランスのグループが「凍結」「延期」「見直し」を求めて声を上げている。  新型コロナ危機を克服し、新しく構築すべき経済、社会においても、地域に根ざして活動する中小事業者の存在が不可欠である。「税制で商売をつぶすな」の願いを込め、以下の事項を請願する。 【請願事項】  「インボイス制度は、実施を中止すること」との意見書を国に上げること
              ──────────────────────────────                   請  願  文  書  表 △請願第11号 「滋賀県低年齢児保育保育士等特別配置事業」の予算縮小に反対することについて 請 願 番 号 第11号 受 理 年 月 日 令和4年12月6日 件     名 「滋賀県低年齢児保育保育士等特別配置事業」の予算縮小に反対することについて 請願者住所氏名 (略) 紹 介 議 員 黄野瀬明子 節木三千代 付 託 委 員 会 厚生・産業常任委員会 審 査 結 果 請 願 要 旨  新型コロナウイルス感染拡大が長期にわたり、県内の保育所で働く職員は、感染防止対策を続けながら、子ども生活や発達を守っている。しかし現場では、感染防止への業務負担に加え、感染時の対応等で、業務の過重負担が続いている。  こうした問題の背景には、そもそも保育所の職員配置基準が低く、保育職員の業務量に合っていない実態がある。これは、滋賀県が行った保育士実態調査報告書で、現行よりも職員配置基準の引上げを求める声が多いことが報告されていることでも分かる。また、静岡県牧之原市の保育所で起きた送迎バスでの子どもの置き去り事件でも、現場の人手不足の問題が指摘されている。  実際に保育現場では、「休憩や休暇が取れない」「体調が悪くても休むことをためらってしまう」「子どもに対して十分な保育ができない」といった状況が慢性化している。こうした職員配置基準の低さが、保育職員の労働条件の悪化を生み、学生の就職離れや子育て世代の離職につながっている。  今回、滋賀県は、「次期行政経営方針策定に向けた収支改善の取組」として、「滋賀県低年齢児保育保育士等特別配置事業」に関わる予算を縮小しようとしているが、この制度は、保育現場で1、2歳児の保育を充実させる上で、大変重要な役割を果たしている。本来は国が責任を持つべき施策であるとしても、地方自治体の先行的な施策として現場から歓迎されてきた制度である。  よって、私たちはこのような理由から、以下の項目について請願する。 【請願事項】 1 滋賀県低年齢児保育保育士等特別配置事業に関わる予算縮小を行わないこと 2 滋賀県として保育士の増員を行い、子どもが安心・安全に過ごせる保育環境を整えること           ──────────────────────────────                   請  願  文  書  表 △請願第12号 介護保険改定案を撤回し、介護保険財政の抜本的な見直しを求める意見書の提出について 請 願 番 号 第12号 受 理 年 月 日 令和4年12月6日 件     名 介護保険改定案を撤回し、介護保険財政の抜本的な見直しを求める意見書の提出について 請願者住所氏名 (略) 紹 介 議 員 節木三千代 付 託 委 員 会 厚生・産業常任委員会 審 査 結 果 請 願 要 旨  2024年の介護保険の改訂に向けて、政府は今年12月にも結論を出す予定である。  利用料負担については、現行の「一定以上所得」「現役並所得」の判断基準額を引き下げることによって、利用料2割負担、3割負担の対象をそれぞれ拡大することが提案されている。  現行の1割負担においても、経済事情によって必要なサービスを利用できないケースが後を絶たない中、さらなる利用料の引上げが介護サービスの利用控えを加速させ、世帯の生活を後退させることは確実である。  要介護1、2の生活援助サービスを総合事業に移行させる案が示されているが、総合事業に移されることによって提供されるサービスの量、質が低下し、これまでの在宅生活を維持できなくなる事態が広がることが予測される。特に要介護1、2の認定理由の多数を占め、初期の段階から専門職の支援を必要とする認知症の高齢者、家族に困難が集中することになる。そもそも各市町村において総合事業の整備自体が進んでいない中で、非現実的な提案と言わざるを得ない。  このように介護保険改定案は、いずれも大幅な負担の引上げと給付の抑制を図る内容であり、コロナ禍や物価高騰のもとで苦しんでいる利用者、高齢者にさらなる困難を強いるものである。また、費用負担の見直しについて、対象となる利用者、高齢者が果たして負担可能なのか、その十分な検証が行われないまま提案されている点も重大である。  以上の点から、滋賀県議会としても政府に対し、このたびの介護保険改定案を撤回し、介護保険財政(公費、保険料の構成割合)を抜本的に見直す意見書を提出するよう求める。           ────────────────────────────── △陳情についての報告 ○議長(岩佐弘明) なお、陳情については、お手元に配付いたしておきました一覧表のとおりであります。           ──────────────────────────────                   陳  情  一  覧  表 △陳情第4号 民主主義・立憲主義の基盤である思想・良心の自由、請願権等を守ることについて 陳 情 番 号 4 受 理 年 月 日 令和4年11月30日 件     名 民主主義・立憲主義の基盤である思想・良心の自由、請願権等を守ることについて 提  出  者 (略) 要     旨 第1 はじめに  現在、マスコミ等で政治家に対し、特定の宗教団体およびその関連団体との関係を断つように求める論調が繰り返され、令和4年9月には富山市議会において「特定の宗教団体およびその関係団体との関係を一切断つ」という決議がなされ、同様の決議案が複数の地方議会に提起されている。しかし、それぞれのポリシーが尊重されるべき民間団体においてはともかく、全ての県民に対して中立・公平たるべき地方公共団体の機関である知事や県議会が特定の宗教およびその関連団体との関係を遮断することは、地域内の関連団体や信者らの憲法第19条の思想・良心の自由、憲法第20条第1項の信教の自由に対する侵害となることはもちろん、憲法第16条で保障されている請願権の侵害となり、憲法第14条第1項で禁じられている法の下の平等に違反することになる。これらの基本的人権は、いずれも民主主義の根幹と立憲主義の基盤を形成するものであり、地方公共団体の機関である地方議会がこれらを侵害することは、我が国の民主主義と立憲主義を危うくするものである。かかる見地に立ち、滋賀県議会の代表者たる滋賀県議会議長に対し、次のとおり陳情する。 第2 陳情項目 1 滋賀県および滋賀県議会において特定の宗教法人およびその関連団体(ただし、反社会的団体との法的根拠がある団体は除く)との関係を遮断する内容の宣言・決議をしないこと 2 滋賀県および滋賀県議会において市議会議員を含む公人および私人に対し、特定の宗教に対する信仰の有無を問うたり、その団体との関係を調査、質問したりしないこと 第3 陳情理由 1 思想・良心の自由および信教の自由について (1)憲法第19条は「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」と定め、同第20条第1項前段は「信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。」としている。これらの権利は、世界人権宣言の内容を基礎として、これを条約化した国際人権規約(自由権規約)にも定められており、同規約第18条第1項において、「すべての者は、思想、良心及び宗教の自由についての権利を有する。この権利には、自ら選択する宗教又は信念を受け入れ又は有する自由並びに、単独で又は他の者と共同して及び公に又は私的に、礼拝、儀式、行事及び教導によってその宗教又は信念を表明する自由を含む。」として思想または宗教を表明する自由が含まれ、同条第4項で「この規約の締結国は父母及び場合により法定保護者が、自己の信念に従って児童の宗教的及び道徳的教育を確保する自由を有することを尊重することを約束する。」ことが定められており、これらの内容は、憲法第19条および同第20条第1項の内容としても保障されている。 (2)思想・良心の自由には、「沈黙の自由」、すなわち、思想・良心を告白するよう強制され、または推知されない自由が含まれており、このことは信教の自由における信仰にかかる告白についても同様である(佐藤幸治「日本国憲法論第2版」245頁、254頁)。 (3)よって、首長や地方議会において特定の宗教団体およびその関連団体との関係を遮断する旨の宣言、決議、地方議員を含む県民の信仰を質問し、または調査することも日本国憲法の定める信教の自由および思想・良心の自由に違背することは明らかである。 送 付 委 員 会 総務・企画・公室常任委員会           ────────────────────────────── △休会の議決 ○議長(岩佐弘明) お諮りいたします。  明13日から20日までは、委員会審査等のため休会いたしたいと思いますが、これに御異議ありませんか。    (「異議なし」)  御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。    ──────────────── ○議長(岩佐弘明) 来る21日は、定刻より本会議を開き、付託案件に対する各常任委員長の報告を求めます。  本日はこれをもって散会いたします。   午後3時3分 散会    ────────────────...